■元F1レーサー・井出有治がFIT e:HEV Modulo Xをワインディングチェック!
●アクセルひと踏みで分かる気持ち良さは、トータルバランスの賜物
2001年に初登場した初代フィット。現行の4代目フィットが発売されたのは、2020年2月でした。この4代目はスポーティグレードの設定は無く、パワートレインも1.3Lのガソリンエンジンと、2モーターハイブリッドのe:HEV(イー エイチイーブイ)です。
その後2021年6月に一部改良されたのと同時に登場したのが、FIT e:HEV Modulo X(フィット・イーエイチイーブイ・モデューロ・エックス)です。
カタログモデルで、ホンダのメーカーチューンドであるFIT e:HEV Modulo Xを手掛けたのは、ピリッとアクセントを効かせるアクセサリーやエアロパーツなど、ホンダ車を本気(マジ)モンでカスタマイズしているホンダアクセス。オシャレなだけじゃない、メーカーが作る機能を併せ持つエアロパーツには、コアなファンも多いのです。
今回、このFIT e:HEV Modulo Xをワインディング試乗したのは、2006年、HONDA V8エンジン搭載マシン(SA05)でF1参戦への夢を実現させたレーシングドライバー、井出有治さんです。
「レースで稼いだお金で初めて買った愛車がアコードワゴン!」という井出さん。実はフォーミュラニッポン(当時)やスーパーGTでもホンダエンジン/ホンダ車(NSX/HSV-010 GT)をドライブしていたんですよね。
●FIT e:HEV Modulo Xのベース車は、FFの「FIT e:HEV LUXE」
Modulo Xシリーズは2013年のN-BOXから始まり、N-ONE(2015年)、ステップワゴン(2016年)、フリード(2017年)、S660(2018年)ヴェゼル(2019年)、そして最新Modulo Xが2021年6月に登場したFIT e:HEV Modulo Xです。
ベース車となったのは、BASIC、HOME、NESS、CROSSTAR、LUXEというタイプがあるなか、装備充実バージョン、LUXE(リュクス)。パワートレインはガソリン車ではなく、力強く滑らかなe:HEVを選択しています。
今回、Modulo Xとの比較として、井出さんにはFIT e:HEV LUXEも一緒に試乗していただきました。
「LUXEだって何の不満も無い走りですよ。フィットはサイズの小さいBセグメントですが、室内は思った以上に広いし、Aピラー前にガラス部分があることで開放感もあるし、何よりココのお陰で視界が良好。この部分は誰からも好評を得ていますよね! ホント、キャッチコピーにある『ココチいい…』がそのままぴったりフィットしています。
1.5Lのハイブリッドは、流石に峠の上りではパワー的にはプアかな?とも思いますけど、街中や峠の下りなら十分に走るし。これにModulo Xの『匠のクルマ作り』が加わったらどうなるのか…? 楽しみです」(井出)。
●インテリアにもFIT e:HEV Modulo Xの「粋な心地よさ」を感じる!
では井出さん、FIT e:HEV Modulo Xでドライブに行きましょ!
「まず、この白黒ツートーン(プラチナホワイト・パール&ブラック)のボディカラーがカッコいいですよね。可愛い顔のフィットだけど締まって見えて、強さも感じます。それと、内装の赤い部分(ブラック×ボルドーレッド)も、真っ赤ではないのがシックで落ち着きもあるし。
サイドサポートのボルドーレッド部分は本革で、黒い部分はラックス スェード®が使用されていますね」(井出)
この白黒2トーンのボディカラーが一番人気だそうですよ。他にはプラチナホワイト・パール(白一色)、ミッドナイトブルービーム・メタリック、そしてクリスタルブラック・パールの4色で展開されています。
インテリアは、現在発売しているModulo Xのフリードやステップワゴンはブラック一色ですが、FIT e:HEV Modulo Xでは、このブラック×ボルドーレッドのツートーンか、ブラック1色のどちらか好きなカラーが選べるのだそうです。Modulo Xシリーズの中でインテリアのカラーチョイスができるのは、このFIT e:HEV Modulo Xが初だとか。
「シートにはModulo Xロゴが入っているし、本革巻きステアリングや本革巻きセレクトノブには、オシャレにボルドーレッドのステッチも入っていますよ! やりますね、Modulo X!」(井出)
インテリアでは他にも、パワースイッチもModulo Xロゴ入りの専用品、フロアカーペットマットもModulo Xアルミ製エンブレム付きです。また、ステアリングのリモコン部、ドリンクホルダー部、エスカッションカバー部(シフトノブの回り)のそれぞれが、グレーメタリックのアクセントカラーインテリアパネルになっているのも、Modulo Xの拘りですね。このような細かいインテリアパーツですが、カスタマイズ好きとしてはココロ踊る部分でもあります。
●いやビックリ! FIT e:HEV Modulo Xはスタートと同時にバネ下の軽さが分かる
じゃ、Modulo Xロゴ入りのスタートボタンをONにしてGO!
「え? 軽いです! 1m走っただけでも、専用の軽量ホイールによるバネ下の軽さが分かりますよ。
ノーマルのLUXEを先に乗ったので違いがよく分かるんですけど、軽量ホイールからくるバネ下の軽さ、それがFIT e:HEV Modulo Xを動かした瞬間に分かりました。バネ下が軽いというのは、走りに大きく好影響をもたらしますからね」(井出)。
FIT e:HEV Modulo Xが履くホイールは、専用の16インチアルミホイール。ベースのLUXEとサイズは同じですが、重さはLUXEと比べて1本で約2.9kgもの軽量化になっています。ということは、4本で約11.6kgも軽い!
軽さだけではありません。剛性にもこだわっているのがModulo X。一般的に軽量高剛性が良いとされていますが、Modulo Xは「ホイールもサスペンションの一部」という設計思想で、リム部の剛性を“あえて落とす”というアプローチを取り入れています。こうすることで、ホイールがバネのようにしなり、タイヤの接地面圧を高めて“タイヤを使い切る”ことができるのです。
「ホイールデザインは、『SUPER GT 2021』で伊沢拓也選手と大津弘樹選手が乗っていた#64 Modulo NSX-GTのホイールと似ていますね。スポーク部が細いから中のブレーキが良く見えて、それだけでもスポーティな感じがカッコイイ。もちろん、スリムなセンター部や細いスポークも単なるデザインなだけじゃなく、軽量とバランスと強度をあわせ持っていて、しっかりタイヤを使い切って走っているという感じがします。
ホント、ホイールってタイヤと同じように走りに重要な部分で、一番力を受けるボルトとの締結部分は強度が無ければいけないし、もちろん軽量化も重要。車重も軽いフィットクラスでこの軽量ホイール、いいですねー!」(井出)。
●適度にスポーティ度がアップされた、しっかりした足まわり
ダンパーもModulo X専用です。路面をしっかりとらえるよう、バルブ形状にもこだわったダンパーが奢られています。開発コンセプトは『誰がどんな道で乗っても安心して気持ち良く走れる』です。
『上質かつ爽快なハンドリングと乗り心地』を目指し開発されたこのダンパーは、ダンパー内部でオイルの通り道となるピストン穴径やバルブの厚み、また枚数を変更し、伸び側と縮み側の抵抗を1:1に近付けることで、タイヤの接地感覚をつかみやすくし、フラットなステアリングフィールを実現したといいます。
「この足、すごいしっかりしていますね。腰があるっていう印象です。なんともないゆる~いコーナーでは、ステアリングを切っただけでスーッと頭も入っていくし、そこそこのスピードでRのきついコーナーに入っても、舵をちょっと修正するだけで、路面の接地感もあってしっかりグリップしてくれます。
LUXEに比べたら多少の路面の凹凸は拾ってしまうけど、でも、ゴツゴツと固い感じはないんです。ウン、やっぱり『しっかりしている』という言葉が一番ピッタリですね。ホイールが軽いこともあり、軽やかに走れている感じ。それに、余分な動きが少ないのもいいですね。
FIT e:HEV Modulo Xは、とにかくトータルバランスに優れています。ノーマルのLUXEはどうしてもちょっとのフワフワ感は感じてしまいます。でも、それはModulo Xと乗り比べたら違いがあるだけで、決してノーマルが乗り難いというわけではないですよ。Modulo Xは上手くバランスをとり、よりスポーティに仕上げてあるという感じです。それに、これ以上ハードなセッティングをしたら、奥さんや彼女さんに怒られちゃいますよ(笑)!」(井出)。
●”風”を味方につけるFIT e:HEV Modulo Xの『実効空力』エアロパーツ
ホンダアクセスが研究に研究を重ね、テストを繰り返し行って作られたModulo Xのエアロパーツは、『実効空力=日常の速度域でも体感できる空力効果』に重点が置かれています。
リフトアップ軽減、ヨー発生減、直進安定性アップ、コーナリング姿勢の安定性アップ、4輪の接地性アップ…。エアロパーツに求められる効果を、人の手(クラフトマン)が作り上げ、その効果を確かめるために風洞実験にかける。
そうして出来上がったFIT e:HEV Modulo X専用のエアロパーツは、しかし、これみよがしではなく、さりげなく装着されているために、知らず知らずのうちに効果を得ている…。そんな感覚を井出さんは受けたようです。
「この直進安定性の良さや風切り音の少なさは、Modulo X専用のエアロパーツが寄与していることが、ノーマルLUXEとの乗り比べにより明白ですね。『これといって鋭い感覚は持ち合わせていない(泣!)』というクリッカーのやすのさんでも、乗ってすぐに分かったそうです。(笑)
足まわりチェックで感じた軽やかさは、ただ単にスッカスカに軽いのではなく(たまにそういうクルマに出会ったりする)、接地感がちゃんとあっての軽やかさ。それは、ホンダアクセスが作り上げたエアロパーツによる『実効空力』と、足まわりセッティングとのバランスによって生み出されているのだと思います」(井出)。
●社外品でのカスタマイズはあまりしないボクだけど、カタログモデルのFIT e:HEV Modulo Xは『ちょうどいい』!
『Honda SENSING』による安全運転支援システムも装備されるFIT e:HEV Modulo X。フロントワイドビューカメラや前方&後方ソナーセンサーによる周囲を監視する高度なデバイスが備わり、安全運転支援システムを正しく作動させるためには車高ダウンなどはできないといいます。
ホンダアクセスでもそんなところから、足まわりチューンは不可能なのか?という問題が、開発初期段階にはあったそうです。
しかし、実効空力エアロ+専用ダンパーチューン+軽量ホイールの相乗効果により、Modulo Xらしいフットワークを得られたそうです。
「ボクは自分のクルマはカスタマイズってほとんどしません。メーカーから売られているそのままの姿で、自分にシックリくるクルマしか買わないんです。街中+αで普通に気持ち良く、気負いせずに流れに乗って運転できるクルマ。それが、ボクが愛車に求めるものです。
このFIT e:HEV Modulo Xはメーカーチューンドのカタログモデルとして存在しています。メルセデス・ベンツのAMGラインやBMWのMみたいにね。
なので、FIT e:HEV Modulo Xはボクにとっても『ちょうどいい』と思います」(井出)。
井出さんの口から飛び出した『ちょうどいい』はフリードのキャッチフレーズでしたが(笑)、FIT e:HEV Modulo Xにもピッタリあてはまると、私も思います。
「さりげなく、いつのまにか走り好きにもフィットしている。それが、FIT e:HEV Modulo Xなのではないでしょうか」(井出)。
(試乗インプレッション:井出 有治/文・永光 やすの/画像:田村 弥)
【SPECIFICATIONS】
車名:HONDA FIT e:HEV Modulo X(ホンダ・6AA-GR3)
全長×全幅×全高:4000×1695×1540mm
ホイールベース:2530mm
トレッド(F/R):1485/1475mm
最低地上高:135mm
乗車定員:5名
車両重量: 1190kg(※ベースのLUXE=1200kg)
エンジン:LEB/水冷直列4気筒 横置
排気量:1496cc
燃料供給装置型式:電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
使用燃料/タンク容量:無鉛レギュラーガソリン/40L
エンジン最高出力:72kw(98ps)/5600-6400rpm
エンジン最大トルク:127Nm(13.0kgm)/4500-5000rpm
電動機最高出力:80kw(109ps)/3500-8000rpm
電動機最大トルク:253Nm(25.8kgm)/0-3000rpm最小回転半径:5.2m
トランスミッション:電気式無段変速機
サスペンション(F/R):マクファーソン式/車軸式
タイヤサイズ(F/R共):185/55R16 83V
価格(税込):2,866,600円
【Modulo X専用装備】
専用フロントグリル(Modulo Xエンブレム付)/専用フロントエアロバンパー/専用リアエアロバンパー/ 専用テールゲートスポイラー/ 専用16インチアルミホイール/専用ダンパー/ダーククロームメッキエンブレム(Hマーク〈フロント・リア〉+車名エンブレム+専用リアエンブレム)/専用コンビシート(ラックス スウェード®×本革/Modulo Xロゴ入り)/専用本革巻ステアリングホイール(ティンブルレザー&スムースレザー/ボルドーレッドステッチ)/専用本革巻セレクトレバー(ブラック/ボルドーレッドステッチ)/専用アクセントカラーインテリアパネル(グレーメタリック/ステアリングリモコン部+ドリンクホルダー部+エスカッションカバー)/専用パワースイッチ(Modulo Xロゴ入り)/専用フロアカーペットマット(プレミアムタイプ/Modulo Xアルミ製エンブレム付)
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【関連リンク】
ホンダ FIT e:HEV Modulo X特設サイト
https://www.honda.co.jp/ACCESS/modulox/fit/
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