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Wednesday, December 22, 2021

小さな子を遺していく…自殺対策の専門家が"普通の家庭のママ"を心配する深刻な理由 誰から見ても成功しているのに… - PRESIDENT Online

コロナ禍で11年ぶりに自殺が増加した。中でも女性の自殺は全ての世代で増加となった。長年自殺対策に取り組んできた中央大学人文科学研究所の髙橋聡美客員研究員は「誰から見ても成功し、問題視されないような『普通の家庭のママ』が自殺し、遺族から相談を受けるケースが増えている」という。何が起きているのか――。

暗い部屋で落ち込み、頭を抱えている女性

写真=iStock.com/spukkato

※写真はイメージです

なぜ女性の自殺が増えたのか

令和2年の自殺者総数は2万907人で、男女別の内訳は男性1万3914人、女性6993人で、例年と変わらず男性が女性を大きく上回る。しかし増減率で見ると、男性の自殺はむしろ減り、反対に女性の自殺は全ての世代で増加となった。

なぜ女性の自殺が増えたのかという問いに対して「これです」という明確な答えはない。そもそも、自殺はその要因は4つ以上あるとされており、いくつかの生きづらさが重なって起きる。コロナ禍での女性の自殺には「原因不明」も多い。そのため、現在わかっているデータと、寄せられている相談内容から、女性の自殺の要因を考えてみたい。

【図表】自殺者の年次比較

自殺の数は男性が多いが、実は例年、うつ病の診断は女性のほうが多い。これは、女性は女性ホルモンが急激に変化しやすいためだ。思春期・産前産後・更年期などに情緒不安定になったり抑うつになったりする。そのためうつ病が多いことと、女性のほうが「眠れない」「気分が沈む」と気になったらすぐに受診行動をとることによるものも大きい。

ストレスの要因も、男性は仕事など家の外にあるが、女性は子育て・育児・DVなど家の中にあることが多い。自粛で家族といる時間が増え、コロナ前から緊張状態が高かった家庭は、さらにその状態は高まっている。

2020年の犯罪情勢統計によれば、児童虐待の疑いがあるとして児童相談所や警察に通報された18歳未満の子どもは前年比8.9%増しで10万6960人となっている。内訳は心理的虐待が7割を超えている。DVの相談・通報も過去最多の8万2641件となった。コロナ禍で虐待・DVは悪化しており、ヤングケアラーの問題も家庭内で深刻化しているのである。

ストレス要因は上がり、ストレス発散要因は下がった

新型コロナ感染に関して、男性よりも女性のほうが、不安が強い傾向もある。実際、「コロナが怖くて学校に行けない」という子どもの、ほとんどのケースでは、母親が過剰にコロナ対策をしていた。がんの意識調査などでも、相談をいくつか受けたが女性のほうが男性より病気に対して「怖い」と感じる傾向が強いことがわかっており、女性は病気に対して男性より不安を強く抱く傾向があるのである。

では通常、女性が男性より自殺が低く抑えられてきているのはなぜか。それは、女性は男性より他者と会話し、会話によってストレスが軽減されていたと考えられてきた。しかし、コロナ拡散防止のため食事・カラオケ・旅行などすべて自粛が求められた。緊急事態宣言が解けて、日常が再開しても食事をするのは「黙食」、温泉に行っても「黙浴」でおしゃべりができない。ストレス要因は上がり、ストレス発散要因が下がり、結果として、メンタルヘルスのリスクが上昇している状態にあるのだ。

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