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Thursday, September 1, 2022

ある里親家族の17年 「普通の親子と変わらない」 - 丹波新聞

兵庫県丹波地域では初めてとなる里親制度の説明会「里親相談会」が開かれるのを機に、里親家族として絆を築いた同県丹波篠山市のある家族に話を聞いた。17年間、里子として育てられたあやのさん(23)は、今は家を出て一人暮らしをしている。一緒に過ごした日々を振り返り、思いを語ってもらった。

「ここまで来るのはなかなか大変で、一言では言えませんわねぇ。うちに来て幸せやったかどうかと思うけど、素直なよい娘に育ちましたわ」―。成長を温かく見守って来た祖母(85)がしみじみと言葉を紡いだ。

父親(65)と母親(59)が、同県尼崎市の児童養護施設「子供の家」であやのさんと初めて会ったのは、小学1年生の夏休み前だった。生まれた時から施設で過ごし、実の親とは面識がなかった。以前に別の家庭に泊まりに行ったが、「きょうだいがいる環境で、自分を出せなかった」様子を見て、出会うことになったのが、子どもがおらず、「子どもを育てたい」と強く望んでいた現在の両親だった。

両親はそれから月に1度、あやのさんに会いに行き、同時に約1年間、里親になるための研修を受けた。

互いに期待と不安が入り混じりつつ、翌年3月にあやのさんは2人の里子になった。戸籍は別で、法的な親子関係はない。あやのさんの意向で名字(通名)は変えなかった。当時、篠山では里親家庭が他になかったため、行政に理解が浸透しておらず、転校手続きに行くと、「保護者の方は?」と言われ、一から説明しなければならなかった。

「できることは全部してあげたい」と、新しい家族は一生懸命愛情を注いだ。プールに遊びに行き、朝から夜まで過ごしたことも。近所の子にうらやましがられるほど、遊園地や映画館にもよく遊びに行った。

あやのさんは当初、里親両親を「おじさん」「おばさん」と呼んでいたが、「とう」「かあ」や「おとん」「おかん」と呼ぶようになり、次第に心も“親子”になっていった。

それでも一度、4年生の時に「施設に帰る」と言ってきかなかったことがある。あやのさんは活発な性格だったが、「どうせ」が口ぐせで、里親の家へは「遊びに来ている」と周りに言うこともあった。「落ち着くまで3年ほどかかります、焦らないでください、と言われていました」と父親。母親は「心を防衛していたのかも」と推測する。

中学校へ上がる時、名字をどうするか、再度話し合いになった。中学校から保護者と同じ名字にしてもらう方が良いと言われたが、あやのさんは「今まで生きていた証を否定するようだから」と変更は拒んだ。両親はあやのさんの思いを受け入れた。

動物が好きで、動物の世話も学べる高校に進学。卒業式に着物で出席した母親は、「無事に卒業できたことが本当にうれしかった」と顔をほころばせる。

あやのさんは、1年ほど前に家を出て、1人暮らしをしている。里親の委託期間は原則18歳、最長22歳まで。里親としての務めは終えた両親だが、「肩の荷が下りるということはありません。車にも乗っているし、逆に心配」と父親。これからも親心に変わりはない。

母親は「里親になったことで、しないよりした方が良いと思える経験をたくさんさせてもらった」とほほ笑む。「100%実の親の代わりにはなれないが、全て理解し合えるわけではないというのは、普通の親子と変わらないんじゃないでしょうか」

「名前は別々のままだし、20歳も超えたけど、2人はずっとお父さんとお母さん。これからも関係は何も変わりません」。あやのさんが、明るく笑った。

ある里親家族の17年 「普通の親子と変わらない」/兵庫・丹波篠山市

「里親登録増やしたい」

兵庫県の児童相談所「川西こども家庭センター」(同県川西市)は8日午前11時―午後3時、丹波の森公苑(同県柏原町柏原)で、丹波地域では初めてとなる里親制度の説明会「里親相談会」を開く。里親として登録することに興味を持っている人に、制度について直接伝えるとともに、北摂・丹波地区里親会の里親から体験談も聞く。

里親は、親の病気や死亡、虐待など、何らかの事情により、家庭で暮らせなくなった子どもたちを、自分の家庭に迎え入れて養育する制度。登録制の「養育里親」、「専門里親」(専門的な支援が必要な子どもを養育する里親)、「養子縁組里親」などがある。このほか、登録不要で、季節や週末に子どもを受け入れるボランティアがある。

養育里親と専門里親については、手当と生活費などが支給される。養育里親の養育手当は月9万円、生活費は乳児以外で月約5万2000円。

現在、社会的養護が必要な子どもの多くは施設で生活しているが、国は、2016年の児童福祉法の改正により、家庭養育優先を打ち出した。県は2029年度までに、現在は20・5%の里親委託率を、47・8%に引き上げる目標を立てている。一方、県内の里親の登録者数の推移は微増という状況で、現在、丹波地域で登録しているのは、丹波篠山市で7組、丹波市で8組。

同会の榎本匡笑会長(62)=同県宝塚市=は「さまざまな子どもたちのニーズに応えられるよう、里親の登録者を増やしたい」と相談会の参加を呼び掛けている。

相談会は予約不要。所要時間は約1時間―1時間半。川西こども家庭センター(072・756・6633)。

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