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度重なる不正会計からネットワンシステムズが再起を図っている。2019年に発覚した循環取引の温床になった中央省庁向けの多重下請け案件から原則撤退する方針を示し、社員個人の成果を過度に重視する仕組みを改めた。
「時間がかかっても、普通のことができるようにする」。一連の不祥事による会長や社長らの辞任を受け、2021年4月1日に社長に就いた竹下隆史氏はこのほど日経クロステックの取材に応じこう語った。だが信頼回復に向けた道のりは険しい。
「自浄作用が働かない状態だった」
ネットワンを巡っては、2019年に日鉄ソリューションズや東芝ITサービスなどが関与した循環取引が発覚した。ネットワン元社員が実在する案件を基に、中央省庁を最終顧客とする架空の商流取引をつくり上げ、売り上げや利益を水増ししていた。売り上げの水増し額は合計で1000億円を超える。
関連記事: 緊急特集、循環取引の闇さらに、別の元社員による仕入れ先との架空取引や水増し取引も明らかになった。自らが所有するプライベートカンパニーなどにネットワンから資金を流出させ、利益を得るといった不正に手を染めていた。ネットワンでは、2013年や2014年にも不正会計が発覚している。そのたびに調査委員会を立ち上げて調査し、再発防止策を策定・実行してきたが、不正の連鎖を止められなかった。
ネットワンシステムズはこれまで不正会計を繰り返してきた
(出所:ネットワンの公表資料などを基に日経クロステック作成)
発覚時期 | 概要 |
---|---|
2013年 | 元社員が約7年間にわたって外部の事業者らと共謀し、架空の外注費名目で約8億円をだまし取った |
2014年 | ネットワン子会社だったエクシードは、将来の業績悪化に備えて外部に資金をプールさせるため、対価となる業務がないにもかかわらず、複数社に外注費名目で資金を支払った |
2019年 | 日鉄ソリューションズ、東芝ITサービスなどが関与する形で中央省庁を最終顧客とする循環取引を繰り返し、売り上げや利益を不正に水増し |
2020年 | 元社員が仕入れ先との架空取引や水増し取引により、自らのプライベートカンパニーなどに不正に資金を流出。原価の付け替えも明らかに |
再発防止策の実行性を担保できず、長年にわたって不正の連鎖を止められなかったことについて、竹下社長は「経営と現場が乖離(かいり)し、自浄作用が働かない状態だった」と話す。「これはトップマネジメントの問題だ。会社全体としてシステムの向上に向けて、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回せていなかったことが一番の原因だった」(竹下社長)。
竹下社長自身、2018年6月からネットワンの取締役を務める。2019年に発覚した循環取引について、外部調査委員会(委員長:岩田合同法律事務所の本村健弁護士)は2021年3月に取りまとめた調査報告書において、「(循環取引を認識する契機になり得る)端緒情報があることをもって、取締役に2019年循環取引事案の認識可能性があったとはいえず、取締役に善管注意義務違反の事実は認められなかった」とした。
ただし竹下氏を含む3人の取締役について「端緒情報への姿勢等において、必ずしも適切とはいい切れない部分があったと考えられる」と指摘した。竹下社長は取締役当時の自身の経営責任に関し、「取締役の中で甘えがあった。(言うべきことを言えない)責任感のなさや勇気のなさというところは非常に重く受け止めている」と話す。
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