2013年のTBS系「半沢直樹」でブレイクし、2023年には映画「ミステリと言う勿れ」など、多数の映画・ドラマに出演している滝藤賢一。「滝藤」は「たきふじ」と読むこともあるが、圧倒的に「たきとう」が多い。滝藤賢一も「たきとう・けんいち」である。
そして「滝藤(たきとう)」という名字は、名字ランキングではちょうど1万位くらい。筆者は1万位以下を「珍しい名字」と考えているので、「滝藤」は「普通の名字」と「珍しい名字」の境目のあたりの名字である。
「~藤」と書いて「~とう」と読む名字は藤原氏の末裔であることが多い。「佐藤」は「下野佐野の藤原」、「加藤」は「加賀の藤原」という意味で、藤原氏の一族が職業や本拠地と藤原の「藤」をつなげて名乗った名字である。
では、「滝藤」の「滝」とは何だろうか。「滝」というと、今では山の中を流れる川が断崖を落ちるところを指す。しかし、「滝」のつく名字は多い。滝のあるような山の中にそんなに多くの人が住んでいたとは考えづらい。
実は、古い時代には「滝」とはもっと広い意味があった。小学館『日本国語大辞典』で「滝」を引くと、その意味として一番最初に書かれているのが「急な斜面を激しい勢いで下っている水の流れ。急流。奔流。激湍。早瀬。」である。そして、2番目が「懸崖から激しく流れ落ちている水。」すなわち、今使われている「滝」だ。つまり、かつては「滝」とは白波を立てるような急な流れを指し、今使われている「滝」の意味は、「滝」の意味の1つに過ぎなかった。
急流であれば、そんなに山の中でもなくてもある。そして、そうした急流の近くに住んでいた藤原氏の一族が、「滝の近くの藤原氏」という意味で「滝藤」と名乗ったのだろう。
「滝藤」という名字は、全国の6割以上が愛知県にあり、滝藤賢一も愛知県の出身。そして、愛知県内ではそのほとんどが一宮市に集中している。一宮市は木曽川の左岸に広がる町。かつて木曽川は数多くの支流にわかれ、今の一宮市内を多くの分流が流れていた。そして、それらの支流には流れが速く、白波を立てていたものも多かったに違いない。そうした場所に住んでいた藤原氏の一族が名乗ったのが「滝藤」である。
◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。
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