- Q
- 「〇〇の裏舞台」という表現を使ってもいいだろうか。
- A
- ある物事が行われている裏側で起こっていることを言うのに、「舞台」ということばを使うとすれば、伝統的には「舞台裏」です。「裏舞台」は誤用であると指摘されることがあります。
[解説]
「舞台裏」は「客席からは見えない、舞台の裏側。大道具の置き場や楽屋のある所」。転じて「ある物事が行われている裏面」という意味で使われます。例えば「明治維新の舞台裏」「舞台裏で交渉を続ける」などの例が考えられます(語の意味および用例ともに『明鏡国語辞典第3版』2021・大修館書店)。
質問にある「裏舞台」は、おそらく「表舞台」の反対ということで出てきた言い方だと考えますが、『明鏡』には「舞台裏」の項目に「「裏舞台」は誤り。」とあります。また、『三省堂国語辞典第8版』(2022)には「裏舞台」の項目はありますが、「舞台裏」に導く空見出しとして掲載されています。そのほかの辞書ではほとんどが「舞台裏」の立項があるだけで、「裏舞台」の立項はありません。
「裏舞台」と同じように「裏○○」という形になる語には、「裏街道」「裏木戸」「裏社会」「裏番組」などの語があります。新しいことばでは「裏アカウント」などのことばもあります。「裏社会」は「普通の社会とは異なる掟(おきて)で成り立っている、非合法な社会。」(『大辞林第4版』2019・三省堂)という意味です。つまり「社会の裏側」ではなく、「表に見える普通の社会の裏側にある別の社会」というふうに考えられます。「裏社会」以外の「裏〇〇」はいずれも「おもてにある普通の〇〇(街道、木戸、番組、アカウント)に対して、それと並列するように別に存在するもうひとつの〇〇」という意味です。
一方、「○○+裏」という形の語は「舞台裏」「天井裏」などがありますが、これは「〇〇の裏側」という意味です(注)。
「裏表紙」と「表紙裏」とで考えます。「おもて」の表紙に対して、背表紙をはさんで反対側を「うら」の表紙という意味で「裏表紙」。一方で、「表紙裏」は、表紙の裏の面「表紙の裏」という意味で使われます。
ただし、必ずしも「表○○」と対の形で「裏○○」があるというわけではありません(例:「裏番組」があるからといって「表番組」ということばがあるわけではない)。
さて、質問の「舞台に見えている表側ではなく、その裏側」という意味であると考えると、別の舞台があるわけではないので、「舞台裏」ということになります。
なお、「光が当たっている実際の舞台」である「表舞台」に対して、その影になっているところにもうひとつの舞台があるのだと考えれば、「裏舞台」という言い方も誤りとは言えなくなります。ただし、伝統的にはこうした言い方はあまり行われておらず、誤用であると考えられてしまいます。放送で使う場合には、伝統的な「舞台裏」を使うか、「舞台の裏側」などとしたほうがいいでしょう。あるいはただ「裏側」でも意味は十分伝わります。
注:「裏工作」は「見えないところで行う工作」、「楽屋裏」は「楽屋の内側」といったように、「裏舞台」「舞台裏」における「裏○○」「○○裏」の使い分けとは異なることばもあります。
からの記事と詳細 ( 「舞台裏(ぶたいうら)」と「裏舞台(うらぶたい)」 - nhk.or.jp )
https://ift.tt/05fGreF
普通の
No comments:
Post a Comment