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Tuesday, October 31, 2023

「僕は普通の生活を知らない、きっと味わうこともない」ガザから ... - 東京新聞

 中東で活動する国際NGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の広報担当、並木麻衣さん(38)のもとに、パレスチナ自治区ガザ出身の友人から再びメッセージが届いた。イスラエルによる封鎖と地上作戦で人道危機が深刻化する中、ガザの人たちはどんな思いでいるのか。日本ができることはないのか。(木原育子)

◆元夫とガザで暮らす4人の子、嘆きを聞いた母は

 「僕が生まれてから戦争ばかりだった。普通の生活がどんなものかも知らないし、僕がそれを味わうこともきっとないんだ」

 ガザに住む男子高校生が23日、中東のヨルダンに身を寄せる40代の母親に電話で嘆いた。母親の女性は並木さんのJVCパレスチナ駐在員時代からの友人だ。

 女性には小学生から高校生までの4人の子どもがいる。子どもたちは元夫とガザで暮らす。イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃後、女性は12日に初めて子どもたちと電話でつながった。小学生の娘は「ママ、ここから出して」と泣き叫んだ。
 ガザの窮状を世界に知らせるメッセージとして、女性は会話内容を並木さんに託し、「こちら特報部」は19日付で詳報した。その後、女性は23日に電話でやりとりした内容を再び、並木さんに託した。
ガザ出身の女性から23日に届いたメッセージ。並木さんが日本語に訳した(並木さん提供)

ガザ出身の女性から23日に届いたメッセージ。並木さんが日本語に訳した(並木さん提供)

 以前は反抗期の影響もあって、あまり母親と話さなかった高校生の息子が、今は思い詰めたように胸の内を明かすようになった。

 「いつかガンを治す医者になりたいと思っていたし、他にもたくさんの夢があるけど、それはどうやらかなわないみたいだ」。23日の電話で息子は切り出し、こう続けた。「パレスチナでは子どもが大人になることすら叶わないんだから」

◆「いつ爆撃があるか分からない、恐怖で頭がいっぱい」

 女性は自身の思いも並木さんに伝えた。「子どもたちと同郷の親類は一家で亡くなっているし、私の親類も友人も亡くなった。何の罪もない人々がガレキの下敷きになっていく」

 さらに、こう訴えた。「私たちとウクライナの人々との間に違いはないのに国際社会の反応は違う。ダブルスタンダードが私の大切な人たちを殺していく」

 29日も女性は子どもたちと連絡を取った。「いつ爆撃があるか分からない。今は無事だが、恐怖とパニックで頭がいっぱいだ」と切迫した様子だったという。

 並木さんも気が気ではない。東京外国語大でアラビア語を専攻。在学中に留学して以降、JVCの現地駐在員時代を含め、パレスチナ・イスラエルに10回以上、渡航してきた。女性と同じく4児の母でもある。

並木麻衣さん(JVCホームページより)

並木麻衣さん(JVCホームページより)

 かつてガザでこう言われた。「日本も戦争したのに、今はきれいなビルが立ち並ぶ。なぜガザだけがガレキのままなのか。なぜガザでの暴力は許されるのか」。返す言葉がなかったことをよく覚えている。

◆人道支援のトラックも「地獄の日々を引き延ばしているだけ」

 現地情勢の悪化とともに人道支援のトラックが到着したというニュースを見るたびに「これを食べて頑張って、ということを意味する。地獄の日々を引き延ばしているだけで、何て残酷なことを強いているのだろう」と胸が苦しくなる。

 ガザは東京23区の6割ほどの広さだ。東京駅をガザ中心部に置き換えると、北は足立区・北千住あたりから南は横浜市に相当する。そんなエリアに220万人が住む。国連人道問題調整事務所(OCHA)などによると、ガザの死者数は7日以降、1カ月もたたず7000人を超えた。

 JVCは他の国際NGOとともに、日本政府が停戦に向けた外交努力を尽くすよう求める要請文を提出している。

 並木さんは「パレスチナの願いはシンプルで、この戦いを止めること、その一点だけだ。目を向けてほしい」と一刻も早い停戦を切望した。

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