近ごろ都に流行るもの
かつてラジオのパーソナリティーといえば歌手やタレントだったが、今は誰もが番組を持てる時代。ポッドキャストなどインターネット経由で音声データを届ける仕組みが整った。そんな現代を象徴する「普通の女性」たちのおしゃべりが共感を呼んでいる。隔週日曜午後8時配信の「チャポンと行こう!」は、通販雑貨店に勤める40代女性2人による番組だ。開始4年あまりで再生聴数1200万回を突破する人気で、10月末に行われた初の公開収録には300席に1600人超の応募が殺到した。その魅力とは?
リスナーが顧客に!? 勤務先の業績も飛躍
抽選を突破したリスナーが客席を埋め尽くす、東京・青山のスパイラルホール。壇上に「北欧、暮らしの道具店」の佐藤友子店長(46)と、スタッフの「よしべ」こと青木好能(よしの)さん(43)が登場し、わーっと拍手が鳴り響く。
「めっちゃ人がいてキンチョ~!」と上ずった声をあげる店長。「よしべ落ち着いてるじゃん」と水を向けると、よしべさんは「カタカタカタ…」と声に出して震えてみせた。素朴なユーモアに、聴衆もふふふと目尻を下げる。
公開収録は普段と同様、寄せられた「お便り」を読み上げ、本日のお題となる「一問一答」へと進む。
「お二人の距離感とても好きです。関係は友達、義理の姉妹、上司部下?」
「全部そうです。夫の妹、仕事仲間」とよしべさん。同店を運営するクラシコムの青木耕平社長(50)は、店長の共同創業者であり実兄、そしてよしべさんの夫なのだが、そんな間柄を超えた仲良し感が伝わる。
リード役の店長は「私が落ち込んでるときの収録では、よしべが察してすごくしゃべるの」。低い声で「いいやつ~」とよしべさん。爆笑を誘いつつ、「私が思う友達の定義は、無事を確認したくなる人」。うんうん…。客席の頭がうなずいている。
「まるで温泉のような、チャポン!とゆるいトークをお届け」が番組のコンセプト。しかしテーマは多岐にわたり、職場や家庭でのモヤモヤや「頑張らないことの難しさ」など、人生や価値観の本質に触れてくる。
収録の佳境。店長は高校卒業後18歳で上京し、アルバイトを転々とした20代を振り返り「履歴書を書くのが恥ずかしくて…。今、こんなに長く同じ仕事を続けられるとは思ってなかった」と打ち明けた。
30代で兄と不動産系ビジネスを起業するも失敗。15年前、初めて訪れた北欧の働き方・ライフスタイルに感銘を受け、カード限度額までビンテージ食器を買い込んで日本で売ったことが事業の出発点になったという。よしべさんも静かに相づちを打つ。
経歴やキャラクターを盛ることのない2人の正直な話しぶりが、また聞いてみたいと思わせていた。
◇
後日、東京都国立市のクラシコムを改めて訪ねた。
大量に届くお便りに2人は全て目を通している。
「チャポラー(リスナー)の方々は、それぞれの場所で頑張っている同士。お悩み相談的なお便りには、身の程で答えていい範囲を決めています。私たちの考えや体験は一つの事例にすぎないので」「軽く笑える話を挟み込んで、全体で〝いい湯加減〟を保つように心がけています」
配信を始めた平成30年の再生聴数は8カ月間で20万回だが、コロナ下で急増し昨年は年間580万回の人気番組に成長。それでもメインの仕事は変わらない。取締役として商品やコンテンツの統括を行う店長。ウェブページを編集するよしべさん。それぞれ毎日忙しく働く母親たちである。
社員の奮闘が実を結び、北欧雑貨輸入販売から始まった事業は、オリジナルのアパレル・化粧品の開発やメディア制作にも拡大し、売り上げはこの5年で3倍の51億円(今年7月期決算)。8月には東証グロース市場に上場を果たした。
販売に直結せずとも、家事中も〝ながら聴き〟できるラジオ番組は主婦層と親和性があり、顧客開拓に役立っているはずだ。古くて新しい音声メディアの力を再認識させてもらった。(重松明子)
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