第8波入りしたともいわれる新型コロナウイルス禍。入学と感染拡大が重なってキャンパスライフが始まった大学3年生が、思い描いた学生生活を送れないまま、進路選択の時を迎えようとしている。心身の不調や生活の困窮を訴え、人生プランの修正を余儀なくされた学生も出てきた。(田中万紀)
「1人暮らしをしていたけれど、実家に戻った。1人でコロナにかかったらどうしようと不安だった」
東海地方の大学3年生(21)は、オンライン授業続きだったことを理由に下宿を引き払い、実家に戻った。入学直後から講義は中止やオンライン化が相次ぎ、学外での体験や実習はことごとく取りやめに。当初は授業の有無が数日前まで分からないことも多く、「授業を優先すると、思うようにアルバイトに入れず、収入も安定しなかった」と振り返る。
仲間づくりの主要な場となるサークル活動も大きく制限された。合唱サークル入りを希望していた都内の女子学生(20)は、3年になった今もサークルに参加できていない。「2年生になってから後輩に交じってサークルを探し、新たな人間関係を築く勇気はなかった」と嘆く。
何事にもやる気が起きず、ささいなことで落ち込んでしまうなど、精神的にも不安定な状況が続いた。都内の下宿や実家に引きこもっていた結果、3年になるまで学内に友人は一人もできなかった。
「制約のない大学生活を知らない。コロナがなければどんなふうだったのか想像することもできない。進路選択が迫った今でも自分が大学生という実感はなく、高校最後の春休みがずっと続いている感覚です」
ケアが抜け落ち
長引くコロナ禍は、大学生の精神面に負の影響を及ぼしたようだ。秋田大の研究グループは、①コロナ禍初期の令和2年5~6月②3年3~5月の2回に分けて大学生のメンタルヘルスの状態を調査。985人の回答を分析した。
その結果、中等度以上のうつ症状と分類される学生が、1回目の11・5%から2回目には16・6%に増加。より深刻な「自殺を考えるような状態(自死念慮)」は5・8%から11・8%と悪化した。
うつ症状や自死念慮に陥った要因を聞くと、学業不振や経済的困窮が目立ち、そうした悩みを抱えるほど、中等度以上のうつ症状や自死念慮に陥るリスクも高かった。一方で、悩みを聞いてくれる人がいれば、いずれもリスクが半分以下に低下することも明らかになった。
研究を主導した秋田大の野村恭子教授は「社会の先行き不透明感は薄らいでいったはずなのに、学生のメンタルヘルスはむしろ悪化していた」と分析。「大学生は精神的に成熟しておらず、社会的基盤もないのに小中高校生と比べてもケアが抜け落ちていた。そうした意味では〝社会的弱者〟ともいえ、的確なサポートが必要だ」と強調した。
寄り添う試みも
大学も学生への支援策を進める。秋田大は精神的に落ち込む人に寄り添うスキルを養う「自殺ゲートキーパー養成動画」を作成。動画で学んだ学生が、互いに悩みを打ち明けたり相談に応じたりして、心身の健康を取り戻すための試みだ。
日本大文理学部は東京都世田谷区と連携して今年10月、学生約8千人にデジタル地域通貨「せたがやPay(ペイ)」を配り、コロナ禍と物価高に苦しむ学生を支える。明治大は学生同士が自由に交流できる場になればと3月、構内に机やいすを多数配置したラウンジを複数、設けた。
静岡県立大では有志の在校生が月数回、経済的に困窮する学生に食料を配布するなど、相互扶助の輪が広がっている。
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