重度心身障害児者とその家族を追ったドキュメンタリー「普通に死ぬ〜いのちの自立〜」が16日から、東京都北区東田端2のバリアフリー映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」で上映される。映画制作会社マザーバード代表で監督を務めた貞末麻哉子さん(64)は「『普通』の観念から解放され、人それぞれがありのままを生きることが幸せなのでは」と問い掛ける。(小形佳奈)
静岡県内の社会福祉法人が運営する生活介護事業所(通所施設)ができるまでを追った「普通に生きる〜自立をめざして〜」(2011年)の続編。長年、障害者を巡る課題などを撮り続けている貞末さんが、今回は同じ法人がつくったグループホームや自宅で暮らしながら、昼間は通所施設で仲間と過ごす利用者たちの姿を描いた。
利用者を支える親たちも年を取る。たんの吸引など医療的ケアが必要で、自宅で暮らしてきた利用者2人の母親が、相次いで亡くなる。残された2人が自宅や通所施設から離れた病院の入所病棟ではなく、住み慣れた地域で仲間たちと暮らすにはどうしたらいいか。法人の役員や施設職員、家族が激論する場面もある。
貞末さんは、施設を古くから支える看護師と共に、医療的ケアが必要な人を20年以上前から受け入れる兵庫県西宮市のグループホームを訪れる。施設の代表者は言う。「サービスを提供してあげているのではない。(利用者と)一緒に心を震わせている」
本作のテーマは「親亡き後」の障害者の生活だが、貞末さんは「『家族で見るのが当たり前』という風潮の中で、親自身が自分の人生が歩めていないことにも目を向けて」と話す。
会場の「チュプキ」は障害の有無にかかわらず楽しめるバリアフリー映画の専門館。字幕・音声ガイド付きの上映が実現した。
30日まで、休館日の水曜と19日を除く毎日午後零時20分から上映。上映時間119分。同館=電03(6240)8480。
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