プロ野球を見ると、今季157キロ以上をマークした日本人投手は16人いる(8月26日時点、「データで楽しむプロ野球」参照)。 160キロ:杉山一樹(ソフトバンク)、藤浪晋太郎(阪神) 159キロ:今井達也(西武)、千賀滉大、甲斐野央(ともにソフトバンク) 158キロ:平良海馬(西武)、K-鈴木(オリックス) 157キロ:山本由伸(オリックス)、則本昂大(楽天)、岩嵜翔、田中正義(ともにソフトバンク)、小野郁、佐々木朗希(ともにロッテ)、島内颯太郎(広島)、齋藤友貴哉、小野泰己(ともに阪神) この中で高校時代に甲子園で活躍したのは、藤浪、今井、岩嵜、小野郁の4人くらいだ。逆に言えば、全国の舞台に出られるような“強豪私学”に所属していなくても、独自の努力で伸びていく投手が少なからずいる。 そうした背景にあるのが、スマホやSNSの普及だろう。選手自身に意欲さえあれば、いくらでも情報を取れる時代になった。それゆえ玉石混淆が進んでいるのも事実だが、“正しそう”な情報をいかに見つけられるかは現代の選手にとって必要不可欠な能力になりつつある。
テクノロジーの活用や栄養面の観点からも
広島で「Mac’s Trainer Room」を運営するトレーナーの高島誠氏(42)は、選手や指導者に役立つ知識を知ってほしいと発信に力を入れる一人だ。オリックスの山岡泰輔や杉本裕太郎、ソフトバンクの高橋礼などを担当する同氏は8月26日、初の著書『革新的投球パフォーマンス 普通の高校生でも毎日50分の練習で140km/hを投げられる』(日本文芸社)を出版した。 「野球は一部の強豪チームや、もともと素質のあった選手のためだけのスポーツではありません。頭を使って方法論を構築すれば、十分に巻き返せます。強豪校の何が有利かと言うと、強いチーム同士で練習試合をするから情報を共有できる。一方、弱いチームはそういうコミュニティに入りにくい。でも情報が入ってくればチャンスがあると思うので、本書がそうしたきっかけの一つになってもらえればと出版しました」 広島商業出身の高島氏は高校時代の長時間練習がたたり、手首を故障して選手としてのキャリアをあきらめた過去を持つ。自分と同じ経験をしてほしくないと考えて鍼灸師の国家試験に合格して以降、いわゆるトレーナーの枠にとどまらず、テクノロジーの活用や栄養面の観点からもアドバイスを行うなどして多くのプロやアマチュア選手から信頼を寄せられている。 普段の活動でとりわけ力を注ぐ先の一つが、昨夏の広島独自大会でベスト4入りした私立武田高校だ。進学校で、平日の練習時間が50分に限られるなか、「フィジカルとデータで高校野球に革命を起こす」という取り組みは、野球ファンの間で広く知られるようになった。 武田の野球部に来るのは、いわゆる“普通”の高校生たちだ。彼らが卒業後も高いレベルで野球を続けられることを目指し、球界で伝統的に行われてきた走り込みやシートノックなど“時間対効果”が低い練習ではなく、トレーニングを重視している。結果、2017年から2021年夏までの間で140キロ以上を計測した投手が11人現れた。2019年育成2位でオリックスに入団した谷岡颯太はその一人だ。
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