人気グループ・King & Princeの平野紫耀が初の教師役を演じる、日本テレビ系『24時間テレビ44 想い~世界は、きっと変わる。』内ドラマスペシャル『生徒が人生をやり直せる学校』(21日、後9:00頃~)。問題児ばかりが集う学校に赴任することになった新任教師・樹山蒼一(平野)たちが奮闘する今作は、実話をもとに子どもたちを取り巻くシビアな問題も描かれているが、全体的には明るく希望あるストーリー。そのなかでも“普通の人”だけど、つい引きつけられ応援したくなるヒーローのような樹山というキャラクターが、作品の大きな魅力を担っている。
今作は、黒川祥子氏によるルポルタージュ『県立!再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』(講談社 現代新書刊)を実写化。“底辺校”と呼ばれる県立槙尾高校に赴任したばかりの樹山は、体育館での朝礼で洗礼を浴びる。生徒たちは誰一人自分のあいさつを聞かず、座り込んだりしゃべったりお菓子を食べたり、電話が鳴れば、かまわず出るし、おまけにバイクのまま乗り込んでくるものまで。ろくにあいさつもできず、礼儀は皆無。荒れた雰囲気のなかでも、ほかの教師たちは「よく来てくれた」「それだけで十分」と寛容な姿勢をみせていて、そのなかに放り込また樹山はおおいに困惑する。
そのなかでも樹山はなんとかして、生徒に寄り添うとするも空回ってばかり。「おはよう!」と元気に声をかけても鼻で笑われたり、どうにかしたいと思ってした行動が裏目に出てしまうこともしばしば。顔面にボールを食らい、生徒たちのいたずらで靴を貼り付けられ、お腹を空かせた生徒たちから追いかけ回され、とにかく翻弄される姿は豊かな表情も伴ってまさに“2.5枚目”の演技が際立つ。「樹山先生、ドンマイ!」と言いたくなるような残念さ具合だ。
平野がこれまで演じてきた役は決して、完璧でないキャラクターが多い。ドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS)の神楽木晴、『未満警察 ミッドナイトランナー』(日テレ)の一ノ瀬次郎、映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』の白銀御行…原作ありきではあるが、どこか“ダメ”な部分あっても、決して憎めないキャラクターをチャーミングに演じてきた。今回演じる樹山もダメだけど応援したくなる、そんな雰囲気を感じる。
樹山がいかにして教師になったのか、どのような先生を志す理由があったのか、約2時間のドラマのなかで描かれているわけでない。“2.5枚目”な一面をみせつつも、漫画・アニメ実写のような特別な設定もない。樹山は問題児の集まる“底辺高校”にたまたま配属されたまで。これまで演じてきたなかでも圧倒的に“普通の人”。ステージの上ではアイドルとしてキラキラをまとっている平野だが、今作では泥臭く頑張る一人の教師をシンプルに演じている。
最初は彼らの行動に腹を立てたり嘆いたりしていたが、次第に、「困った生徒たちは、本当は困っている生徒たち」というせりふにあるような、悩みの本質を理解して行動を起こそうと七転八倒する姿には心打たれる。樹山という人のバックグラウンドが詳細に描かれていないにも関わらず、「この先生はきっと信頼できる」という説得力があり、生徒のために奔走する姿に背中を押される。叱責されたり間違えたりもする普通の人…だけど生徒を守りたい、どうにかして救いたいというもがく姿は紛れもなくヒーロー。そんな人物を平野が生き生きと表現している。
また、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、板垣李光人、水沢林太郎、青木柚、桜田ひより、田辺桃子、河合優実といった生徒役の役者も今をときめくフレッシュな俳優たちがそろう今作。劇中では楽しそうに見えても、ふと将来をあきらめたような寂しさをみせる高校生を等身大に演じており、彼らと、平野、そして同じく新任教師・岡部薫子役の浜辺美波との演技のぶつかり合いもみどころに。
そして、生徒と教師の関係は、樹山と教え子たちだけでなく、樹山と伊藤英明演じる原田教頭の関係もまた、親しいものがある。生徒たちから嫌がらせを受けた樹山に「このオトナは信用できるのか、試しているんだよ」とさとし、彼らとの向き合い方についてさりげなく助言を入れる。そんな原田教頭の言葉に感化され、自ら行動に出ようとする樹山の姿は、もうひとつの生徒と教師の物語をみているようでもある。さまざまな登場人物たちのかけあいによって生まれる物語が詰め込まれた新しいカタチの学園ドラマとなっている。
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