朝ドラ『おちょやん』が、コロナ禍の中で変則的なスタートを切った。
SNS上では当初、否定的な意見が少なくない。ビデオリサーチが調べる初回の世帯視聴率18.8%(関東地区)に対して、「7作ぶりに20%の大台割れ」とネガティブな記事も目立った。
しかし第1週を見る限り、同ドラマには可能性がありそうだ。
中高年男性が脱落し、高齢女性が支持するという見られ方にこそ、今後への期待が高まる。ドラマの内容と視聴者の反応をリンクさせながら私見を述べたい。
ネガティブな意見
『おちょやん』の注目度は、11月30日と中途半端な時期のスタートだったこともあり、今一つだった。
関東地方で56万台以上のインターネット接続テレビを対象に視聴状況を調べる東芝「TimeOn Analytics」データによれば、『エール』最終回は8.21%の接触率で幕を閉じたが、『おちょやん』の冒頭には12%少ない人々しかいなかった。
しかもオープニングの笑えないドタバタで、その貴重な視聴者の2%が一挙に逃げてしまった。
SNS上でも、この辺りについては手厳しい。
「押し付けがましい面白くないドタバタオープニングでもう見たくなくなった」
「初日はドタバタが過ぎて大阪制作のマイナス面が多くて嫌やった」
「朝ドラの出だしは、大して面白くないのよね~ で、だんだんハマってく」
お話が展開し始めると、「貧困」「理不尽」「不憫」要素に対しても、否定的な意見が加わった。
全然笑えないわ」
「河内弁が口汚すぎる。 親父がクズ・後妻もクズ。私はもう見ない」
「父親がダメな人でまたドタバタ劇で…使い古されている感じ。失礼ながら朝から騒々しくて見れない」
「私自身が不景気なのに、貧乏な家族を朝っぱらから見たくないんだよな」
「心に悪いので、不愉快なものは見ないことにしよう」
データが語る視聴風景
視聴者の属性別に個人視聴率を調べているスイッチメディアラボによれば、直近の朝ドラ5作の最初の一週間は、見られ方が次のように違っていた。

まず男女35~49歳では、『まんぷく』『なつぞら』『スカーレット』の順によく見られ、『おちょやん』は最下位だった。さらに男女50~64歳でも『おちょやん』はビリ。
しかも2層(35~49歳)や3層(50~64歳)では、女性より男性の落ち込み方が激しい。どうやら中年男性は、『おちょやん』と肌が合わなかったようだ。
ただし女性65歳以上では、トップに躍り出た。
ダメ親父と健気な娘と無垢な弟、そこに自己中の継母登場という展開は、かつて『おしん』に涙した高齢女性の琴線に触れたのかも知れない。
物語の展開と視聴者の反応
再び東芝「TimeOn Analytics」データで、『おちょやん』1~5話の接触率推移を見てみよう。
関東地方56万台の動向では、2話まで接触率右肩下がりが続いた。そして3~4話が横ばい、5話で初めて右肩上がりに転じた。

次に視聴者数の多い50歳以上男女。
50~64歳女性は4話までほぼ横ばい、5話で右肩上がり。同世代男性は、3話まで右肩下がり、4話横ばい、5話で右肩上がりとなった。
最後に視聴者が最も多い65歳以上。
男性が4話まで若干の右肩下がり、5話のみ右肩上がりだった。ところが女性は、全話で右肩上がりが続いた。しかも既に紹介した通り、数値が飛びぬけて高い。
初回はダメダメな父親・テルヲ(トータス松本)の下、極貧生活にめげず健気に生きる主人公・千代(毎田暖乃)。
2話は継母・栗子(宮澤エマ)が来たことで学校に行けることを喜ぶ千代。3話は千代の粘りと死んだ母の縁で、鶏が売れる話。4話は弟・ヨシヲ(荒田陽向)の行方不明事件と、千代と栗子の火花散る関係。そして5話は、母娘の喧嘩を止めたヨシヲの気持ちを汲んで千代が栗子に頭を下げ、奉公に出るお話だった。
視聴者の反応を押しなべて言えば、中高年男性は途中までで脱落した人が少なくなかった。
飲兵衛で働かない父親は、後妻の栗子に弱い。しわ寄せを受ける千代を十分に守れないだらしない男の典型として描かれたが、そんな弱さを正視したくない中高年の男たちが見るのをやめていたのではないだろうか。
いっぽう65歳以上の女性たちは、千代に惹きつけられていた。
千代の拠り所は、死んだ母からもらったビー玉と、母に託された家と弟のヨシヲを守ること。そして魅力は、「うちは可哀そうやない」と言い切る生活力と、「明日も晴れやな」という口癖が象徴する前向きな姿勢。
貧しさと身を持ち崩すような男がまだ散見された昭和30~40年代を知る高齢女性たちは、バブル経済前夜の頃に放送された『おしん』に魅入った人が少なくない。その『おしん』の主人公を彷彿とさせる千代に、今後の展開の面白さを確信したのではないだろうか。
本と演出、そして演技
表面的にはドタバタあり、「貧困」「理不尽」「不憫」がこれでもかと描かれ、中高年男性を中心に引いてしまった視聴者がいた。
それでも台本と演出、そして役者の演技は傑出していた。
筆頭はやはり千代。
歯に衣着せない豪快なセリフと表情で感情を巧妙に伝える演技は、とても9歳の小学生とは思えない。『Mother』の中で、実母から虐待される少女を6歳で熱演した芦田愛菜に次ぐ驚きの子役ぶりだ。
例えば3話。
鶏が売れ、帰途に父・テルヲと亡くなった母の墓参に行った。その際「(栗子は亡くなった母と)まるで違うから惚れた。似てたら思い出す」と言われ、嬉しさが滲み出る表情は絶品だった。
最高峰は文句なく5話のラスト。
奉公に出る日、弟・ヨシヲの「姉やん、早よ戻ってきてな」の悲痛な叫びを振り切るように走り出す千代。当初は自己中で性悪女に見えた栗子の複雑な表情と、切れる三味線の弦。ダメダメな父のテルヲも、それを機に千代を追いかける。
父が追いついた際に、一瞬顔をほころばせる千代。
しかし母と弟の写真を渡されると、表情は一変する。そして去る父を呼び止めると、今度は父の表情が緩む。ところが千代はきっぱりと宣言する。
「うちは捨てられたんやない」「うちがアンタラを捨てたんや」
他にも『半沢直樹』13年版を書いた八津弘幸の筆と演出陣の映像は、随所に光るものがあった。
継母を初めて知る母として慕う弟の無垢だが必死な振る舞い。
お礼を述べに学校に行った際、「普通の子なんていません」と千代に声を掛けた先生の一連の表情の変化。
隣家に挨拶に行った際には、千代の手をギュッと握りしめるだけというウメばあちゃんの寡黙な雄弁。
その孫の勝次は、『トトロ』のカンタを思い起こさせるが、随所で絡み着実な成長をそこはかとなく感じさせた。
「登場人物の微かな表情の変化、辺りの情景、そこかしこに思いが溢れています」
「それぞれの人間模様が見れて見応えがあって良かった」
「どうかなぁ~と思ってたけど、なんやね!? 今朝は泣けたやないけぇ~」
「初日はドタバタが過ぎて大阪制作マイナス面が多くて嫌やったけど、日に日に大阪制作の良いところ出てきて面白くなってきたな」
SNS上でも面白くなって来たという意見が少なくない。
まさに視聴データの波形と一致する。
前作『エール』と同じように、コロナ禍での逆風を受け低い数字で始まってはいるものの、物語の展開とともに評価が上がる予感に満ちた一週間と言えよう。
春までの展開が楽しみだ。
からの記事と詳細 ( 男にゃつらいよ!? 『おちょやん』第1週~“高齢女性支持・中高年男性脱落”の可能性~(鈴木祐司) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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