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Thursday, March 19, 2020

直感の職質、オウムの闇暴く糸口に 静岡の元警察官が初証言|静岡新聞アットエス - @S[アットエス] by 静岡新聞

ワゴン車に乗っていた男性信者2人に職務質問したとみられる現場=19日午前、静岡市駿河区高松(写真の一部を加工しています)

 オウム真理教による地下鉄サリン事件から20日で25年。発生時は富士宮市に教団の富士山総本部があり、静岡県内でも信者の活発な動きがあった。14人が死亡した未曽有の事件を受け、県警も総力を挙げて信者の摘発に着手した。「普通の若者が教団に入り込んでしまった。それだけに余計危うさを感じた」-。当時、静岡市内の交番に勤務していた警察官で、職務質問から信者の逮捕につなげた男性が、四半世紀前の緊迫した状況を初めて証言した。
 肌にかすかに感じる程度の小雨がちらつき、水平線を遮るように駿河湾には薄霧が立ち込めていた。事件から10日後の1995年3月30日午前、静岡市高松(現・駿河区)の海岸。当時、静岡南署高松交番に勤務し、自転車でパトロール中だった男性(68)は異様な雰囲気を感じ取った。海に向かってポツンと止まったワゴン車。運転席と助手席で男2人が寝ている。窓をたたいても反応はなかった。
 車内には無造作に詰まれた数十もの段ボール。その一つに張られた郵送用シートがふと目に入った。宛先は熊本県波野村(現・阿蘇市)。熊本は妻の出身地で、波野村の名前は話題に上り、よく覚えていた。オウム真理教が進出し、教団施設を構えていたからだ。
 「オウムじゃないのか?」。直感から声を掛けた。疲れた様子の2人は顔を上げ、観念したような、ほっとしたような表情を浮かべた。この職務質問をきっかけに、県警は教団の闇を解き明かす糸口を得た。
 県警は翌31日、車内で爆発性のある化学薬品を所持していたとして、毒劇物取締法違反容疑でこの信者2人を逮捕した。その後、1人は地下鉄サリン事件で使われたサリンの製造を手伝ったなどとして殺人ほう助などの罪で実刑判決が確定。刑事裁判で初めて、同事件が「教団による犯行」と認定された。
 男性は2人の逮捕後、当時住んでいた官舎から引っ越した。報復を恐れ、事件についても口をつぐんだ。だが、18年7月に教組の麻原彰晃(松本智津夫元死刑囚)ら13人の死刑が執行。事件から25年の節目を迎え今回、初めて事件について語ることを決意した。
 ただ、不安は残る。「人間関係が希薄の現代、また普通の若者がオウムのような組織にすがってしまうのでは」と。
 教団は「アレフ」など三つの後継団体に分かれて活動を続け、事件を知らない若い世代を勧誘し、名前を伏せて新たな信者の獲得を進めているとされる。県警の山城達也警備部長は言葉に力を込める。「教団の危険性は今も変わっていない。事件を風化させることなくあらゆるテロの警戒を続ける」

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March 20, 2020 at 07:24AM
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