非進学校出身は、東大生全体のわずか2~3%
──東大入学者のうち、非進学校出身者はどれくらいの割合なのでしょうか?
神田直樹さん(以下、神田) 一度計算したことがあるのですが、1年の東大入学者およそ3000人のうち、80~100人くらいだと思います。もちろん、非進学校の定義によって変わりますし、地方によっては東大生は少ないけれど京大生は何人も輩出している、といった高校もあるので、正確な数字は定かではありません。ですが、だいたい1学年につき2~3%くらいだと思います。
──やはり、非進学校出身者はすごく少ないですね。地方の話が出ましたが、東大合格者の地域格差はあるのでしょうか?
神田 あると思います。UTFRには地方出身者も多いですが、四国や沖縄出身者はほとんど見かけることはありません。また東北出身者もあまり多くありませんね。彼らは東大よりも東北大学に進学する人が多いのかもしれませんが。やはり地方よりも、首都圏の高校からのほうが進学しやすいという傾向はあるのではないでしょうか。
──首都圏と地方の学習環境はどんな違いがあると思いますか?
神田 私は千代田区の小学校に通っていましたが、実に8割くらいの子どもが中学受験をします。逆に、受験しないほうが珍しいくらいなんです。そのため、地元の公立中学校に成績がいい生徒が少なくなってしまうほど。なので、先々の進学を考えると、中学受験して偏差値の高い中学に行くのが一般的ですね。
なので、東京では高校入試があまり盛んではなかったりします。中高一貫校に進む人が多いですからね。
一方、地方では中学入試はメジャーではなく、高校入試を経て公立高校に行くほうが一般的なため、首都圏と地方では、それぞれ抱えている問題の構造が異なるのではないか、と考えています。
地方の学習環境の現実と、「東大生」を伝える活動
──清水さんの出身である群馬県では、中学受験は一般的でしたか?
清水大志さん(以下、清水) 全然一般的ではなかったですね。地元では1学年に1人受験をしたといううわさがあるくらいで、中学受験の文化はなかったです。ほとんど全員が地元の公立中学校に行って、みんなで高校受験をして、それぞれの学力別に振り分けられるという感じでした。なので、入学後に首都圏と地方の学習環境の違いを知り、びっくりしました。
──受験勉強をする上で、地方格差を感じたことはありましたか?
清水 ありましたね。田舎の小中学校でのんびり過ごしていたので、受験勉強においても基礎固めからしないといけませんでした。ですが、東京で東大進学を目指している人たちは中学受験を経て、いち早く東大進学を目指して勉強しているわけだから、基礎段階から大きな差が出てしまいます。そのため、田舎の高校生は東京の高校生とそもそものスタートラインや学習環境が異なるので、さまざまな面で苦労することが多いと思います。
このような地域差を少しでも埋めて、東大や東大生の存在を認知してもらうために、UTFRでは地方への訪問活動を行っています。沖縄県石垣島や高知県檮原町などの学校を訪れて、少しでも東大生の存在を知ってもらうような活動をしています。また、学校での講演会や地域のお祭りへの出店などもしています。
──地方に赴かれて、感じたことや変化などはありましたか?
清水 地方を巡ることで、「勉強をがんばっていい大学に行きたいです」と言ってくれる小中学生がいたり、「東大生って意外と普通で面白い人が多くて、見方が変わりました」といった感想もいただいたりします。なので、東大生を身近に感じてもらったり、勉強のモチベーションになってもらうという目標は達成できているのではないかと思います。
非進学校や地方の高校生が、東大に入るための条件とは?
──非進学校や地方の高校生が東大に入るためには、何が必要だと思いますか?
清水 まずは、応援してくれる先生や仲間をつくることが大事ですね。そして、自分に合った効率的な勉強法をいち早く身につけることも重要です。自分は中学のころから自身の勉強スタイルをある程度確立していたこともあり、自ずと成績が上がっていきました。
──神田さんは何が必要だとお思いますか?
神田 「情報、お金、そして承認」。この3つが重要だと思います。情報と金は他者からもらうことができますが、承認だけは得ることが非常に難しいです。先生や友人、親などからの承認がない限り、孤独に東大を目指すことはできないと思います。どこかで何かが自分を承認していないとうまくいかない。逆に承認を得られることで東大合格に近づくと、非進学校から東大を目指したUTFRのメンバーを見ていて感じました。
人間は無根拠に自信を持つことはできないし、地方や非進学校では、1人も東大生を見たことがないという状況も珍しくありません。だからこそ、UTFRが承認の役割を担うべきなのでは、と思っています。私たちは東大受験において前例をつくった、それこそ開拓した存在です。そんなメンバーの存在が、非進学校や地方から東大を目指す高校生たちの、孤独に打ち勝つ一助になると思います。
──確かに、自分のことを認めてくれる存在がいるのは心強いですよね。
神田 そうですね。実は「承認」って非進学校・進学校関係なく、得難いものだと思います。進学校出身者にとって、東大に入ることはある意味当然なので、承認を必ずしも必要としません。ですが、UTFRのメンバーは当然ではないので、人生のどこかで誰かの承認を得たという大きな経験があるんです。だからこそ、UTFRのメンバーは進学校出身者よりも生き抜くパワーが強いと感じますね。
これからも地方や非進学校の高校生を支える活動を
──今後の、UTFRの活動の展望について教えてください。
清水 UTFRって、非進学校から東大に進学した人たちが集まっていますが、そのこと自体にものすごい価値があると思っていて。自分たちの存在自体が、地方や非進学校の高校生たちの勇気づけになれるのではないかと考えています。そのため、今後は自分たちの存在を日本全国に知らしめて、「こういう人たちがいるんだから、自分も東大を目指せるのでは?」と、自分で自分を認め、勉強に取り組む高校生が増えるとうれしいです。
──最後に、地方や非進学校から東大を目指す高校生に、メッセージをお願いします。
清水 周りで東大を目指す人はいないかもしれないし、勉強をがんばるということ自体が普通じゃないかもしれません。ですが、可能性は無限大にあると思います。現在高校生の方だと、受験まであと1年や2年しかないかもしれません。ですが、その1~2年間でどれだけの可能性が詰まっているのかは計り知れないと思うので、ぜひ自分自身を信じて、がんばってほしいです。
──神田さんからもお願いします。
神田 ほとんどの人って、問いが与えられないまま日々を過ごしていくことのほうが多いでしょう。そのようななかで、東大にチャレンジするべきか否か、という問いを与えられていること、あるいはそれを自分に対してつくり出せるということは、とても幸せなことだと思います。
受験がうまくいくかどうかはさておき、チャレンジすることにより次の問いを生み出せると思います。自分自身が何かを決めること、そして何かを決めるための問いが立つこと、これこそが自分らしさだと思います。なので、ぜひ自分の進む道を思い切り楽しんでほしいですね!
取材・文/福井求
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