前立腺肥大症の手術の5つ目として、前回は今年の4月から保険診療となった「PUL(経尿道的前立腺吊り上げ術)」を取り上げました。今回は、PULの手術がどのような患者さんに適応となるのかを紹介します。

PULが適応となるのは、「HoLEP(ホーレップ=ホルミウムレーザー前立腺核出術)やTURP(タープ=経尿道的前立腺切除術)の手術ができない患者さんにこの手術を--」と、日本の厚労省から指針が出されたのです。

それは前立腺肥大症の状態ではなく、「他に疾患があって身体の状態が悪く、手術時に麻酔をかけることができない、といった患者さん」。加えて、「認知症のために手術時もじっとしていられない患者さん」などとなっています。実際、他の手術が受けられないこのような患者さんが、PULによって改善するのは良いことです。ただ、保険適用でPULが受けられるのは決して多くはありません。その適用範囲をもっと広げるべきです。

そこで、私たち泌尿器科医が望んでいるのは、外国のようにごく普通の手術として対応すべきだということです。

PULの術後には「性機能障害がなかった」と報告されています。たとえば、PULは他の手術で起きる可能性のある合併症の「逆行性射精」も起こさない。逆行性射精とは、身体の外に射精されるはずの精液が、外ではなくぼうこう側に射精されてしまうので、射精した感じがなくなってしまうのです。だから、本来であれば、若い患者さんをもPULの適用にすべきと願っています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)