前線でハードワークを惜しまない瀬川選手（中）（湘南ベルマーレ提供）
懸命にボールを追う少年の中でプロ選手になれるのは、ほんの一握りである。しかし、プロになった選手が必ずしも子どもの頃や学生時代に飛び抜けているというわけでもない。
今季、柏レイソルから加入した二十八歳の瀬川祐輔もその一人だ。「普通の少年団でサッカーを始めて、中学も高校も普通の部活。大学も推薦ではなく、勉強で入り、四年の夏まで試合に出てもいなかった。世間的には全く知られていない選手でした」と振り返る。
諦めきれない思いを抱きながらも一般企業への就職活動をし、内定を受けた。その年の十二月末に突如、Ｊ２のザスパクサツ群馬からオファーがあり、プロの道へ進んだ。そして努力して結果を残し、カテゴリーをＪ１に上げ、試合出場を重ねてきた。
コンスタントに出場していた柏を離れて移籍を決めた理由を「これまでとは違うものを取り入れなければいけないタイミングが今年だと思ったから。そう思った自分に期待しなければいけないと感じた」と話す。
理解者がいて、勝手が分かっている場所にとどまる方が楽である。そうではなく、成長を期してチャレンジの扉を開く決断をしたのが瀬川らしさとも言える。
新しいことに触れ続ける日々は大変だったようだ。しかし驚くほど前向きなエネルギーを発しながら毎日を過ごしている。「智さん（山口監督）の指導は本当に新しい気づきが多くて、この年齢にして、『ああ、これがサッカーなんだ』と思うこともある。選択の幅を広げてもらっているし、毎日何かを得て成長している感覚があります」
現状、チームは思うような結果を出せていない。悔しさももどかしさもある。だが、ここ数試合で表現できているものに希望の光が見える。
無名だった瀬川が一筋の光を信じてプロになり、さらに高みを目指して挑み続けているように、揺らぐことのない芯を持ち、戦い抜いていきたい。（遠藤さちえ＝湘南ベルマーレ広報）
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