初の五輪に挑んだ4年前。
坂本花織(シスメックス、神戸学院大)は、同じフィギュアスケートの日本代表に選ばれた羽生結弦(ANA)と接して、思わずテンションが上がった。
わ、ナマの羽生くんや。距離、近っ!
K-POPとアニメ「ハイキュー!!」をこよなく愛する、“明るい普通の女の子”。
北京が舞台となる2度目の五輪は、「女子のエース」の看板を背負う。
男子をもしのぐ最高時速でリンクをかっ飛ばすスケーターは、いかにして生まれたのだろうか。
1パン屋さんではなく…
坂本は2000年4月9日、神戸市灘区で生まれた。
フィギュアスケートを始めたきっかけは、NHKの連続テレビ小説「てるてる家族」を見たことだという。パン職人の道に進むヒロインの四女ではなく、憧れたのはフィギュアスケートで五輪代表となる長女。
4歳で神戸・ポートアイランドのスケートリンクに通い始めた。そこで出会うことになるのが、恩師と、一番身近なライバルだった。
6歳から指導する中野園子コーチは、怖いもの知らずで、かっ飛ばす坂本の姿を覚えている。
「普通の人は速く滑るとジャンプが跳びにくいので制御してスピードを落とすが、花織は思い切り走ってきて、跳ぶか転ぶかのどっちかでした」
初心者が使うお尻パッドも「やりにくいから」との理由で付けなかった。リンクを離れてもピョンピョン跳んでいた。母悦子さんから「まともに歩いて」と叱られたほどだ。
どれだけ氷に体を打ち付けてもへこたれない。そんな日々が、疾走感あふれる今の演技につながっている。
2〝フェラーリ〟花織
本当に速いのだ。
近年は演技中に「アイスタッツ」と呼ばれる計測技術で速度や高さ、飛距離がリアルタイムで表示される。
全日本選手権での坂本のショートプログラム(SP)の最高時速は27・4キロ。男子SPの羽生結弦(23・3キロ)、宇野昌磨(24・4キロ)よりも断然速かった。曲調や構成にもよるので一概には言えないが、坂本の迫力ある滑りは数字にも表れている。
ただ、速ければ速いほど、ジャンプやステップでエッジを抑えるのは難しくなる。「すっ飛んでしまう」(坂本)リスクと隣り合わせのスピードが、スカっとするような爽快感や躍動感を生んでいる。
中野コーチは、坂本の爆発力を高級スポーツカー「フェラーリ」に例える。
3切磋琢磨の始まり
そんな坂本のスピードに目を奪われた少女がいた。
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普通の
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