ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、2021年8月10日に本社をWeWork Japanのオフィススペース「WeWork 渋谷スクランブルスクエア」に移転した。
WeWork 渋谷スクランブルスクエアは、コワーキングスペースと各社の専有スペースを兼ね備えている。DeNAは専有スペースに入居したが、社員はWeWorkが提供する国内外のコワーキングスペースも利用可能だ。今回の移転によって、従来のオフィスでは2500席以上あったデスク数を約3割程度に削減したという。
移転先にWeWorkを選んだ理由や、移転後の状況について、DeNAの清水琢也氏(ヒューマンリソース本部人事総務部総務グループ、グループリーダー)にうかがった。
DeNAの働き方は? 移転前のオフィスの使い方
DeNAはコロナ禍でリモートワークを導入している。ただ、リモートワークに振り切るわけでも一定の出社を強制するわけでもなく、「リモートワークと出社を織り交ぜた働き方」を推奨しているという。
会社として大きな方針は掲げているが、判断は各部門やチームに任せるスタイルだ。出社率は緊急事態宣言が解除された今でも10%前後。押印やプロジェクトのスタート時など、出社が必要なときはあると清水氏は言う。ただ、リモートワークが浸透しているIT企業の中でも出社率10%は低い数値だろう。
そうなると、閑散としたオフィスをどうするかという問題が出てくる。DeNAでは「グループアドレス」を導入した。部署ごとに利用フロアを制限した上で、自由に従業員が座る席を選ぶ形だ。
これにより、使わないフロアをまとめて水光熱費を抑える一方、出社した人を集めてコミュニケーションを活発化する狙いがあった。20年11月から21年8月の移転まで続けたが、WeWork 渋谷スクランブルスクエアに移転してからは、部署ごとの指定もなく自由な席に座るフリーアドレスを導入している。
なぜ、本社をWeWorkに? 3つの理由
清水氏が「とても愛着があった」と話す渋谷ヒカリエから、WeWork 渋谷スクランブルスクエアに移転を決めた理由は3つあるという。
1つ目は、同社の刷新されたコーポレートミッションとビジョン、バリューの中にある「多様な社員が活躍し成長する環境作り」を踏まえ、多様性のある働き方を実現するためだ。
「当社の特性上、本当にさまざまな社員がいます。社員1人1人がいろんな場面で活躍できるようにとの狙いです」(清水氏、以下同)
同社はリモートワークと同時にシェアオフィスも活用していたという。移転によって、働き方のバリエーションがさらに増すことになる。
関連記事
2つ目の理由は、オフィススペースの伸縮性を高めるためだ。今後の感染状況などにより、出社率が大幅に上がっても下がっても、柔軟に対応したいと考えた。さらに、M&Aによる人員増など、事業形態の変化にも素早く対応する。「WeWorkは通常のオフィスと違い、スペースが空いていればすぐに入居できるので、メリットは大きいと思っています」と清水氏は話す。
3つ目の理由は、国内外で事業を展開する場合に、拠点開設が容易ということだ。DeNAはライブストリーミング事業で米国に進出しているが、その際にオフィスの開設が問題になるという。
「事業化する前にさまざまな調査で現地に出向くことがあり、その際に働ける場所をいちいち探すのは大変です。WeWorkは、海外の主要な都市にオフィスがあり、かつ同じネットワークを使っているので、PCを持ち込めばすぐに仕事ができる状況になっています。海外だけでなく国内の拠点もそうですが、すぐ仕事ができるというメリットがあります」
入居してみて分かったメリットもあったという。WeWorkの各拠点は駅に近く利便性が高い。また、オフィスは明るくスタイリッシュだ。
「通勤がつらいなど、出社に対するネガティブな要素が少なく、従業員のモチベーションも上がるようです」
総務担当者にとっても利点がある。
「オフィス家具や会議室といった設備が整っていましたので、移転のスケジュールを短縮できたことも1つの利点だったと思っています」と清水氏は話す。コロナ禍以前、渋谷ヒカリエでは関連会社を含めた約2500人もの従業員が働いていたが、移転は意思決定からわずか6カ月で完了した。
移転先のWeWorkではオフィスの備品が整っていることに加え、定期的な消毒、各種ドリンクの用意、また共有エリアのBGMなどが用意されている。必要なものはもちろん、これまで手が足りずに提供できていなかったサービスまで手間なくそろえられた。
一方、部署や従業員の多さにより必要になるタスクはもちろん自社で実施する必要があるので、清水氏は「WeWorkが提供しているオフィスサービスは、小規模な会社だともっと有効活用できるんじゃないかと感じます」と話す。「例えば郵便物はWeWork側で受け取って分配してくれます。ただ、私たちの規模になると、集めてもらったものを自分たちで部署ごとなどに仕分けることになります」
総務業務のサポートについては、今後もWeWorkとDeNAの両者で相談し、充実させていく検討もしているという。具体的な内容はまだ決まっていないが、本業に集中できる環境を提供したいと語っている。
関連記事
これからのオフィスは「チーム」指向
オフィスの移転について、社員はおおむねポジティブに受け取っているようだ。無料のソフトドリンクや、話題の終業後に提供されるビール(緊急事態宣言中の提供は中止していた)も、自然と人が集まってコミュニケーションが取れると、社員のみならずDeNAの経営陣からも好評だという。
「何事も強制的ではなく、“フランクに”“自発的に”というのが、当社の方針です。WeWorkで提供するビールも、そうしたコミュニケーションを実現するアイテムの1つとして機能していると思います」
反面、リモートワークによってリアルなコミュニケーションが減っていることも課題として認識している。「ビデオ会議で顔を見ながら話はしているものの、会って話す場が少なく、温度感のあるコミュニケーションの機会が減っているという声も出てきています」
そうした中、これからのオフィスのあるべき姿を清水氏は、「チームの競争力を高めたり、信頼関係を深める場ととしてのオフィスに価値が出てくるのではないでしょうか」と説明する。
DeNAはWeWorkとは別に、横浜にも新たにオフィスを開設しており、その際に「仲間とのつながりができる場」「多様性を発揮できる場」「安心して協働できる場」というコンセプトを掲げて環境を整えたという。フリーアドレスを導入しつつも、特定の部門やプロジェクトチームが数カ月に渡って専有できる「Nest」(鳥の巣)というスペースを設け、働き方の多様性に合わせたさまざまな場を提供しているそうだ。
しかし、場を提供しても、社員に使ってもらわなくては宝の持ち腐れ。そこで、「ウェルカムキット」という形で社員にフロア案内を提供している。
「(リモートワークが続くと)出社がイメージできない社員も、もしかしたらいるのかなと。特に移転した後ですので情報を出しています。また、部門で成功した取り組み事例を全社に展開して、こういった働き方ができるという例を提供していきたいと思っています」
多様な働き方に合わせ、新たなオフィスを用意したが「それがどのような成果につながるか、課題がないかを見つけていかなければならない」と清水氏は話す。何が最適解なのか、具体的な方法はまだ出てきていないとのことだが、これからも状況に合わせさまざまな施策案を出していくと前向きに語った。
関連記事
からの記事と詳細 ( なぜ本社が“WeWork”? DeNAが普通のオフィスを選ばなかった3つの理由 - ITmedia )
https://ift.tt/3G2skKH
普通の
No comments:
Post a Comment