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Wednesday, July 14, 2021

ステレオ楽曲も「空間オーディオ再生」、iOS 15のAV新機能チェック! - AV Watch

iPhone向けの「iOS 15」

アップルは秋に正式公開を予定している新OS「iOS 15」「iPadOS 15」などのパブリック・ベータテストを進めている。今回はその中でも、AVに関連する機能について解説していく。

iPad向けの「iPadOS 15」

パブリック・ベータテストは誰もが参加できるものだが、不具合の可能性も多く、利用許諾上制約も課せられているので、多くの人が常用すべきものではない。実際に入れるのではなく、本記事を参考に秋まで楽しみにしていただけると幸いだ。記事内ではiOS 15とiPadOS 15を扱っているが、特に表記のない場合には、どちらでも同じ機能が使えるとお考えいただきたい。

なお、本記事におけるスクリーンショットなどは、報道利用のために特別に許可を得た上で利用している。

ステレオ音源を自動的に「空間オーディオ化」

アップル周りでAV関連の話題というと、今はやっぱり「空間オーディオ」かと思う。Apple Musicの刷新に伴う改良だが、AirPods Proなどの利用を前提とすれば、なかなか快適で楽しい体験だと思っている。

空間オーディオの課題は「楽曲数」だが、iOS 15/iPadOS 15では、それを補う機能が追加される。それが「ステレオを空間化」だ。読んで字のごとく、ステレオ音源に処理を加え、擬似的に空間オーディオ化する。

ボリュームの下のアイコンに注目。「ステレオ」楽曲なのに、右下には「ステレオを空間化」という項目がある。ここが青になっていると「オン」だ

この機能を使うには条件がある。それは「AirPods ProやAirPods Maxを使うこと」だ。

この2機種にはモーションセンサーが入っており、iOS 15からは、空間オーディオの再生時にも積極的に利用する。要は頭のちょっとした移動を認識し、そのずれを音の定位に加味することで立体感を増すわけだ。

「ステレオの空間化」もこの要素を使うもので、他のヘッドフォンからは利用できない。

Dolby Atmosの「空間オーディオ」楽曲再生時。AirPods Maxを使っていると「空間オーディオ」がオンになる
ソニーの「WH-1000XM4」での再生時。楽曲フォーマット種別や空間オーディオに関する選択肢は表示されない

一方、ステレオ音源が再生される場合であればすべての音源で「ステレオの空間化」が行なわれるようで、SpotifyやAmazon Music、はてはYouTubeですら有効だった。Apple Musicでなければ使えない……というわけではないのだ。

よく見るとApple Musicでなく「Spotify」のアイコンが。再生アプリの識別が行なわれている。ただこの場合でも「ステレオを空間化」は有効だ

では、肝心の音はどうかというと、確かに「ちょっと音が広がって聞こえる」。楽曲によって向き・不向きはあるようで、元々空間的な広がりを感じやすい楽曲は「おっ」と思うくらい厚みが出るが、もちろんそうでない曲もある。元々Dolby Atmosで提供される曲に比べると広がりが弱いが、これはこれで確かに有効だ。

とはいえ不自然だと思う時もある。頭の動きをトラックすることで立体感を出している以上、大きく首を振った時に音の出方も大きく変わってしまうからだ。要は、急に右を向いたり左を向いたりすると、音の聞こえる方向も急に変わって、ちょっと違和感を覚える。この現象、Dolby Atmos楽曲をAirPods Pro/Maxで聞いた時にも似たような印象を受けるので、「ステレオの空間化」の問題ではなく、ヘッドトラッキングを使うことによる副作用なのだろう。

とはいえ、無理やり頭をブンブン振らない限り違和感は感じないので、致命的なものとはいえないだろう。

面白い要素だが、オリジナルの音ではなくなるので、もちろん「切っておきたい」と思う人もいるだろう。「ステレオの空間化」のオン・オフは、画面の右上からプルダウンして現れる「コントロールセンター」の音量バーを長押しして現れる設定で切り替えられる。前述のスクリーンショットはそこでのものだ。

なお、ここには「どのアプリからどのフォーマットで再生したのか」ということも表示されるようになった。これもちょっと便利な機能ではある。

雨音や雑踏の音を流す「バックグラウンドサウンド」

音という意味では、ちょっと面白い機能も搭載された。それが「バックグラウンドサウンド」だ。

完全な無音が苦手な人のために、雨音や暖炉で火が燃える音、雑踏などの自然なノイズを流すアプリや音源がある。「バックグラウンドサウンド」は、簡単に言えばそれを再現する機能だ。流す音の種類や音量が調整できるのはもちろん、音楽など他の音を再生した時にどうミックスして流すかも決められる。

iOS 15/iPadOS 15に搭載された「バッググラウンドサウンド」。自然なノイズを聴きながら落ち着いて作業したい時などに有効だ

ちょっと複雑なのは、この機能が「設定」の「アクセシビリティ」の中にある、ということだ。具体的には「アクセシビリティ」の「オーディオ/ビジュアル」にある。これはかなり見つけづらい。

「ステレオの空間化」のオン・オフや、AirPodsなどの設定もそうなのだが、そろそろiOSの設定項目やその分類は見直した方が良いのではないか。面白い機能なのに気づかないまま……という可能性もあるだろう。

BGM自動設定に文字認識、「写真」機能の拡張

今回は「写真」周りにも変化が大きい。

AV的な楽しみ方としてまず紹介しておきたいのが「メモリームービー」機能だ。ある場所を訪れた時に撮影した写真を動画的なスライドショーにして見せる……といってしまえばよくある機能なのだが、今回、iOS 15/iPadOS 15では、Apple Musicとの連携が強化された。

写真からスライドショーを作る「メモリームービー」。iOS 15/iPadOS 15ではApple Musicと連動し、サービス内から写真にあった楽曲を自動設定する

曲を流しながらスライドショーが再生されるのだが、ここでの「曲指定」が重要だ。自分でやらなくていいのだ。

写真の撮影場所などの情報に合わせ、Apple Musicから楽曲がピックアップされる。なんとなく耳障りがいいけれど匿名な用意済みのBGMではなく、Apple Musicにある著名な曲が自動で選ばれるのである。もちろん、利用にはApple Musicへの加入が必要だが。

例えば、幕張で撮影した写真にはグレイトフル・デッドの「Truckin’」が、ラスベガスで撮影した写真にはエルヴィス・コステロの「Mistery Dance」が、パリで撮影した写真にはブリジット・バルドーの「La Madrague」が流れた。なかなかそれっぽいとは思わないだろうか?

「メモリームービー」の例。上部に再生されている楽曲の名前が表示されている点に注目

なにが流れるかはユーザーによって違うようなので、これは一例に過ぎない。ストリーミング・ミュージックとフォトライブラリの連携としてはなかなか魅力的なものだと感じた。この機能はiOSはもちろんだが、tvOSでも使えるため、Apple TVを使ってテレビで楽しむ……というのも良さそうだ。

「写真」でもう一つ大きな変化は「文字認識」だ。

iOS 15/iPadOS 15では、写真の中に含まれる文字を「選択」できる。画像の中から文字を自動認識し、テキストと同じように扱えるようになるのだ。対象となる画像は過去に撮影したものでもいいし、スクリーンショットでも写真でもかまわない。認識も一瞬で時間はかからない。画像の中の文字がテキストのように選択できる様は、なかなかインパクトがある。

iOS 15/iPadOS 15の「写真」では、画像内の文字を認識して「選択」できるようになる

ちなみに写真の中のQRコードも認識されるので、メモのために撮影しておいて後から認識してウェブへ……といった使い方もできる。

画像内からQRコードを認識した場合には、URLを表示してアクセスすることも可能

画像内の文字認識はGoogleがAndroidで「Googleレンズ」として搭載している。だからアップルは一足遅れた実装ということになるのだが、Googleレンズがネット側での認識であるのに対し、アップルのものはデバイス内AIでの処理という違いがある。だから反応が速く、ネット接続がなくても認識できて、プライバシー面では有利である。

一方、現状のアップルの機能には「日本語が認識できない」というとても大きな欠点がある。日本語も選択できるように見えるが、中国語に誤認識されてしまう。この辺は、来年以降ぜひ日本語対応を進めてもらいたいと感じる。

細かな機能改善も多数。ウェブブラウザーの変化には要注意

細かな変化もある。iPadOSにおけるペンでの文字入力「スクリブル」の日本語対応など、新機能はたくさんあるが、ここでは、多少なりともAVに関連するものを紹介するにとどめておく。

ウィジェットのサイズの幅が広がったのもその1つだ。冒頭で示した2つのOSの画面例では、とにかく巨大なウィジェットを配置してみた。実用性はちょっとどうか、という気もするが、トップ画面ではなく2画面目などにメディアプレイヤー代わりに配置するならいいかも知れない。まあこの辺は、Androidの美点を追いかけている、というのが実情だが。

ウィジェットのサイズはより大きなものが用意されるようになった。メディアプレイヤー系では便利だ

ウェブブラウザーの変化も大きい。特にiOS 15では、アドレス入力欄が「画面下」に移動した。指の移動距離が短くなるように……という配慮なのだが、慣れるまでは無意識に画面上部でアドレスバーを探すクセが抜けない。

iOS 15のウェブブラウザー「Safari」。アドレス入力欄が画面下部に来ているところに注目

なお、iOS 15/iPadOS 15では、ウェブサイト側から自分がアクセスしているIPアドレスを隠す「iCloudプライベートリレー」という機能が搭載された。プライバシー保護という点では大切なのだが、一部のウェブサービスでは認証などの関係か、正しく動作しないことがあった。ベータテスト期間中に色々な動作検証が進むこととは思うが、「トラブルが起きるウェブサービスも存在する」ことは頭に入れておいた方がいい。不便ならiCloudプライベートリレーをオフにすることも検討する必要がある。

iPadOS 15では、iPadOSに最適化されていないiOSアプリの扱いが変わった。画面を横長に持つ「ランドスケープモード」で、画面中央に「縦」にアプリが表示されるようになったからだ。ECサイトアプリやヘッドフォンのコントロール用アプリはiPadに最適化されていない場合も多く、その時には「縦に持つ」必要があったわけだが、iPadOS 15からはその必要がなくなった。

ソニーのヘッドフォンアプリなどのiPadOSに最適化されていないアプリも、「ランドスケープモード」のまま、縦方向に画面を引き伸ばし表示して使えるようになる

むしろ、中途半端にiPadOSへの対応を進めたアプリの場合、全画面にアプリ表示が拡大されるものの「縦持ち」限定だったりする。ゲームなどにそうしたアプリは多いのだが、今回の変更で、そういう半端な対応のアプリの方が使いづらく感じる。

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