昔から巷にあふれる様々な「陰謀論」。今も、新型コロナウイルスのワクチンは「殺人兵器だ」という話から、自死した有名若手俳優は実は他殺だったという話まで、あらゆる陰謀説がはびこっている。こうした陰謀説を信じる人には、どんな傾向があるのだろうか。AERA 2021年4月5日号で取材した。
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一体、どのような人が陰謀論に染まるのか。
「右でも左でもない普通を自認する人ほど陰謀論を信じやすい」
そう話すのは、政治の観点から陰謀論研究をする京都府立大学の秦正樹准教授(政治学)だ。19年、全国1509人を対象に、ウェブで調査を行った。
まず質問の中で、「政治に関することについて、私は他の多くの日本人と同じような意見を持っていると思うか」を尋ね、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人を「普通自認層」、「そうは思わない」「あまりそうは思わない」と答えた人を「非普通自認層」に大別した。
その上で、ネット空間で見受けられる典型的な「陰謀論」として、(1)「北朝鮮と日本の政府は実は裏でつながっている」、(2)「反安倍勢力と外国政府は裏でつながっている」の二つを挙げ、それぞれの説に同意するかを聞いた。その結果、全体では(1)を肯定したのが27%、(2)は17%だったのが、「普通自認層」では(1)が37%、(2)は41%もの人々が信じていた。一方「非普通自認層」では陰謀論的な言説を受容する傾向は見られなかった。秦准教授はこの結果をこう見る。
「自分の考え方が『普通』だと思っている人は、逆に言えば、自分の考え方と違うものはすべて『普通じゃない』と考え、『普通じゃない』陰謀論も信じやすくなってしまいます。『こんな普通なことがわからないお前が変なんだ』と言えば、何でもまかり通ってしまいます」
■好奇心旺盛だからこそ
さらに秦准教授は「知識が高い人のほうが陰謀論を信じやすい傾向がある」と指摘する。
「一般的に、知識を高めた方が陰謀論に騙されにくいと思われていますが、多くの研究では逆の因果関係もありうると考えられています」
不思議なこと、よくわからない情報に接すると、知的好奇心があればあるほどその先を調べていく。その際、推論には質のいい推論と悪い推論があり、質の悪い推論に行きつけば、陰謀論にハマることになる確率が高まるという。
「好奇心が旺盛だから本当の原因を知りたいと思う。それは政治においても、有名人の死亡においても同じです」
陰謀論に陥らないためにはどうすればいいか。秦准教授は「個人で出来る対策はほとんどない」と語る。
「究極的に言えば、騙されないためには、知的好奇心を捨ててくださいということになります。実効的な取り組みとして、多くの陰謀論はネットで拡散するのでヤフーやグーグルなどインターネット上のプラットフォーマーである企業が、社会的責任としてネット上の陰謀論を積極的に削除する取り組みをもっと強化するしかないと思います」
たかが陰謀論、されど陰謀論。40年以上にわたり「世界の謎と不思議」に挑み続ける月刊誌「ムー」の5代目編集長、三上丈晴氏(52)は、陰謀論を甘く見てはいけないと言う。
「陰謀論をバカにする風潮は怖い。逆に言えば、甘く見ていると陰謀論に取り込まれる」
そのためには、免疫をつけることが重要と三上氏は言う。人は、その話が99%嘘でも1%でも真実があれば信じてしまう。その1%を見抜く力が必要だという。
「例えば、『ワクチンは殺人兵器だ』という陰謀論について、なぜそのような言説が出てきたのか真正面から受け止め、一つ一つ確認していく。そうすれば、嘘かどうか簡単にわかる。こうして免疫をつけることで、陰謀論に騙されることはなくなる」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年4月5日号より抜粋
からの記事と詳細 ( 「陰謀説」は“普通の人”こそハマりやすい? 驚きの調査結果 騙されないためには「免疫を」と専門家 - goo.ne.jp )
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