横浜FMのDF松原健が明かすこだわり「他のポジションではなく、サイドバックがいい」
サッカーJ1で昨季15年ぶりにリーグ優勝した横浜F・マリノスのDF松原健が「THE ANSWER」の単独インタビューに応じ、自身のサイドバック哲学を明かした。
【画像】「新サイドバック論」を提示した横浜FM この姿でピッチを駆け抜け…“普通”の概念を覆す松原健がプレーする実際の画像
一般的には“地味”に思われるポジション。それでも、本人は「脇役という意識はありません」という。従来の“普通”の概念を覆したポステコグルー監督の下で築いた27歳の「新サイドバック論」とは――。
◇ ◇ ◇
15年ぶりにJ1リーグを制した横浜F・マリノスのサイドバックが注目を集めている。
世間が抱くサイドバックへのイメージは、ともすれば“地味”かもしれない。豪快にゴールを決めるストライカーや、そのお膳立てをするトップ下やボランチと比較した時に、脇役のイメージは否めない。
しかし当事者の考え方は違った。
「僕個人としては、脇役という意識はありません。主役とは言わないまでも、このサッカーをやっている上でとても重要なポジションだと思っています。サイドバックの出来で試合の流れが大きく変わると感じています」
そう話したのは右サイドバックを主戦場として優勝に大きく貢献した松原健だ。
サイドバックは4バックの両サイドをスタートポジションとする選手で、従来は攻守両面においてタッチライン際での仕事を求められてきた。守りでは相手のサイドアタッカーを止める守備能力を求められ、攻めてもオーバーラップからセンタリングを供給する攻撃性能が必要。前提として、自陣ゴール前から相手陣内奥深くまで幅広く動くための運動量が欠かせない。
高校1年次にMFからコンバートされて以降、純然たるサイドバックとしてキャリアを築いてきた松原健がもともと抱いていた認識も、それと大きく違わなかった。
サイドバックの“普通”を根底から覆したポステコグルー監督の存在
「DFとして守備をしっかりしつつも、オーバーラップを仕掛けてクロスを上げる。それが僕の中でのサイドバックのイメージでした。育成年代の頃は日本代表や五輪代表で活躍していた内田篤人さん(鹿島アントラーズ)のプレーを参考にしていました」
そんな「ザ・サイドバック」とも言うべきプレースタイルの概念を大きく変えたのが、アンジェ・ポステコグルー監督との出会いだ。特定のポジションや役割にとらわれない指揮官は、サイドバックの“普通”を根底から覆していく。
たとえば横浜F・マリノスでは自陣からのボール回しを行う際、サイドバックがインサイド寄りにポジションを取っている。タッチラインを背にしてのプレーと異なり、360度どこからプレッシャーをかけられるのかわからない不安にさらされる。
戦術の一端に過ぎないが、それでも新しい感覚と戦わなければならなくなった松原は戸惑いを隠し切れなかった。
「最初はどうやって動けばいいのか分かりませんでした。どの立ち位置を取り、どうやって周りと絡んでいけばいいのか。求められることも多かったので、整理するのが難しかったです」
斬新なポジショニングで話題を提供する一方で、チームとしては肝心要となる結果が出なかった。ポステコグルー監督1年目の2018年は12位と低迷し、最終節で辛くも残留を果たした。
だが指揮官が就任2年目を迎えた2019年は、奇抜だった戦術が徐々に浸透していく。
松原もその一人である。サイドバックが臨機応変にポジションを取ることで相手のプレスを無効化し、次々と局面を打開していった。
前半戦こそライバルの台頭や負傷に苦しんだが、終盤は不動の右サイドバックとしてレギュラーポジションをつかんだ。相手の急所をえぐるスルーパスを繰り出したのは記憶に新しいところだ。
「中盤にいる相手の背後に入り込んで、そこでボールを受けて前を向けた時は気持ちがいい。川崎フロンターレ戦でアシストになったスルーパスの場面は、感覚的にあの位置に動いて自然とパスを出せました。ニュートラルな状態だからこそできたプレーです」
感覚派の松原らしい言葉を並べるが、要領を得たきっかけについては明確な理論があった。
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