もはや書くまでもないが、ただいま東京は緊急事態宣言の真っただ中だ。
不要不急の外出は控えるのはもちろんのこと、仕事であっても、可能な限り在宅勤務やテレワークが求められている。
しかし、“在宅勤務”というのは準備がいるもの。私が勤めているのは、新宿にある中小企業だが、これまでの“IT化”と言えば、メールを使ったり、業務連絡にLINEのグループチャットを利用するぐらい。それも、社員の私物アカウントだ。PCの多くもオフィスに設置したデスクトップモデルで、時々ならともかく、「毎日、在宅勤務するように」と言われるなど、正直まったく想定していない。
だが、それでも緊急事態宣言はやってきた…………
その前日から、会社ではテレワークの準備に追われながらも、思うようにいかない状況に社員が悲鳴をあげていた。いわく………
「データのバックアップが2時間経っても終わらない!」
「見積書のフォーマット、会社のパソコンに忘れたかも?」
「LINEの使い方の説明だけで会議が終わっちゃった……」
………そんなバタバタの中、進めることになった“業務のテレワーク化”で起きたことを紹介していきたい。
ちなみに、これを執筆している4月16日現在でも、「テレワーク化」は正直なところまだ道半ば。助成金申請の送付を終え、時差出勤や私物マシンでやりくりしながら、何とか形だけでもテレワークしている状況だ。
なお、本記事では「起きたこと」をそのまま書いているため、助成金申請や、テレワーク導入のドタバタなどで「もっといい方法」やなんらかの勘違いが含まれている可能性もあるかと思う。あくまでも「ひとつの事例」として参考にしていただければ幸いだ。
4月6日(月):緊急事態宣言前日「可能な範囲でテレワーク開始!」(社長)
繰り返される自粛要請の週末が明けて、昼過ぎに安倍首相が「緊急事態宣言に踏み切る意向を固めた」とのニュースが流れた4月6日(月)。会社ではこの日から可能な範囲でテレワークを始めることになり、一部の社員が準備を進めていた。
とはいえ、会社支給のパソコンは基本的にデスクトップ。
「知り合いのところは、デスクトップPCを車で家まで運んだらしい」……なんて力業で解決した会社の話を社長に聞かされて、まさか……と思っていたところ、その日のうちに緊急ミーティングを行うことになった。
そこで決まったのが
・自宅の私物マシンを仕事に使ってよし
・必要な機材は都の助成金を使って順次そろえていく
ということ。
ここで知ったのだが、東京都が実施している「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」を利用すれば、パソコンや導入型ソフトの購入費を助成してくれるらしい。
助成率は10/10(!) 。この手の助成金は今までもいくつか見てきたが、10割助成してくれるというのは初めてだ。
ミーティング出席者の満場一致で「申請をしよう」という話になるが、調べてみると必要な書類は山盛りだった。
・事業計画書兼支給申請書(様式第1-1号)
・誓約書(様式第2号)
・雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
・就業規則一式
・会社案内または会社概要
・商業・法人登記簿謄本
・印鑑登録証明書
・法人都民税・法人事業税の納税証明書
・「2020TDM 推進プロジェクト」への参加に関する資料
・テレワーク環境構築図
・見積書
・導入製品等の資料
これは大変だ。とはいえ、公式サイトを見ていると、応募が殺到していることが伺える記述が出てくる。この手の助成金は予算が決まっていて、上限に達したら終了することも少なくない。「一刻も早く申請すべきだ!」という社長の一声で、社員が分担して取り組むことになった。私の担当は「見積書」と「導入製品等の資料」だ。
明日から自宅でテレワーク。「見切り発車で申し訳ないが」と社長はミーティングの最後で話していたが、恐らくどこの会社も同じような状況なのだろう。その初仕事は、どうやら自分が使うマシン選びになりそうだ。
4月7日(火):緊急事態宣言発令の日iMacは助成金では買えない? どうなるデザイナー!?
テレワーク初日の朝、定時になったので私物のマシンを立ち上げて、いつものように「サイボウズOffice」の出勤ボタンを押す。通勤時間がないので、ゆっくり朝食が食べられた。素晴らしい。
ただ、食事中に観ていたテレビでは、緊急事態宣言にともなう休業補償や持続化給付金のことなどで、コメンテーターが大揉めしていた。テレワークの助成金というのは、“外出を自粛させる”と“会社を休業させない”を両立させるためには、「結構いい手段なのでは?」と思う。
さて、助成金申請のための書類の準備に取り掛かる。会社の全スタッフが自宅でテレワークをするのに必要な機材がこちら。
・ノートPC(人数分)
・デザイン作業用のiMac(1台)
・マウス(人数分)
・ヘッドセット(人数分)
・ウェブカメラ(iMac用)
・Microsoft Office(人数分)
・セキュリティソフト(人数分)
・Adobe Creative Cloud(iMac用)
・NAS(1台)
・VPNルーター
外出先で急ぎの案件が発生すると、自宅に戻って業務を行うことが現実的でない可能性があるので、用意するパソコンは基本ノートPCにした。とはいえ、大容量の画像や動画などを扱うこともあるので、なるべく性能の高いマシンを選びたい。
今回の助成金で対象になるのは、1機あたり10万円未満の機器まで。「それって、中古は駄目ですかね?」とデザイン担当者から聞かれるが、募集要項には書かれていない。役員が窓口に問い合わせることにして、ひとまず機器の選定を進めることになった。
……iMacで新品10万円以下は難しい気がするが、その場合、彼女はどうなるのだろう?
マウスやヘッドセット、ウェブカメラには特に社員からのリクエストはなさそうなので、大手サプライメーカーの品をチョイスする。セキュリティソフトは会社で使っているのと同じものを選択。ただ、急いで見積書が必要となるため、アカウント数を拡張するのではなく、販売店でパッケージを購入することになりそうだ。
オフィスソフトは「Office 365 Solo」か「Office Home & Business 2019」で迷ったが、募集要項に「 令和2年7月 31 日(金)までに実績報告を行う 」とあるので、「万一、その時にソフトが使えなくなっている可能性があるのはよくない……」と考えた。よって、永久ライセンスの「Office Home & Business 2019」を選択。しかしこれでは、365ユーザー向けの1TBのオンラインストレージは使えない。やはり、大容量のNASが必要か。
VPNルーターはネットワーク管理者が選定することになった。NASについても「管理者と調整したうえで」ということになり、社員全員でどのぐらいの容量を必要とするかを確認することに。
これまで選んだ機器のカタログをネットで収集。とりあえず、今日できることは全部やれたと思う。
4月8日(水):東京都の新規感染者は144人中古パソコンでは助成金は出ないらしい……
8日(水)の朝、今日も定時に自宅の机に向かい、パソコンの電源を入れる。役員からメールが届いていた。
どうやら、中古パソコンは助成金の対象にならないらしい。
デザイナーとSkypeでじっくりお話をした結果、Windowsマシンで妥協してもらえることになった。デスクトップで、10万円未満で、グラボ積み。いろいろ探してみたが、ゲーミングなデスクトップしか選択肢がない。どうやら、デザイナーにはエレクトリカルなLEDについても、妥協してもらうしかないようだ。
一方、NASについては「3TBだとちょっと足りないかも」とのことで、2ドライブの4TBのモデルを選ぶ。使い方は共有データの保管場所だが、事態が収束してきたら、RAID1を組んで重要データの保管場所にも使えそうだ。
これで必要な機種の選定が終わった。一覧をリストにまとめ、カタログと一緒にメールで送って役員のチェックを待つ。
夕方のニュースがスマホに届くと、6日(月)、7日(火)と減っていた東京のコロナウイルス陽性患者数が、今日は再び3桁を記録していた。明日はどうなるのだろう。中国の武漢では封鎖が解除されたようだが、会社員はみな出勤しているのだろうか?
4月9日(木):東京都の新規感染者が181人に………助成金の申請を提出!審査結果はゴールデンウィーク明け?
今日も朝起きて、朝食を食べて、定時にパソコンを立ち上げて、「サイボウズOffice」の出勤ボタンを押す。テレワークに移行したということは、「外に出て感染リスクを負うな!」との指示だと認識しているので、家族以外の顔はもう3日も見ていない。そろそろ、ビデオ会議でもいいので、誰かの顔を見ながら会話がしたい。
役員の承認も下りたので、今日は見積書の取得に取り掛かる。ヨドバシカメラやビックカメラのオンラインショップが、カートに入れてボタンを押すと、見積書を作成してくれるのは確認済み。あとは、すべての機器をカートに入れるだけだ。
なぜか、「Office Home & Business 2019」が、1点しかカートに入らない。結局、「Office Home & Business 2019」の見積書は、“社員分だけコピーして作成する”という力業で乗り切る。やはり中小企業のテレワーク対応は、なかなかスマートには片付かないらしい。
いろいろとドタバタしたが、これで助成金の申請に必要な「見積書」と「導入製品等の資料」はそろった。翌日にはすべての書類が用意でき、役員から「今日のお昼過ぎに書類を郵送したので、お知らせします」と一斉メールが届く。審査はこれからだが、既に助成金が下りたぐらいの達成感だ。
一般に助成金の審査にかかる時間は2週間ほど。今回は応募が殺到しているようなので、3週間は見るべきだろう。結果がわかるのはゴールデンウィーク明けか。緊急事態宣言は来月6日までだが、その後のテレワークの体制について、まずは筋道をつけることができたようだ。
緊急事態宣言を受けて、会社は17日まで休業することになった。その後も、可能な範囲でテレワークを推奨し、会議などはすべて中止。その一方で、テレワーク環境の準備がまだできていない社員は、時差出勤などを行いながらも、出勤する。一刻も早くテレワークが普及して、不要不急の外出をする会社員が減ることを願いたい。
※編集部より
INTERNET Watchでは、テレワーク導入などの情報をまとめた特設ページを公開しています。僚誌PC Watchのページも含め、気になる方は是非ご覧ください。
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April 20, 2020 at 06:31AM
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