そんな中,昨今一部のゲーマーからとくに注目されている技術の一つが,空間オーディオ技術だ。音がどこから聞こえてくるのか,その方向を(ある程度まで)把握できるようになるというのは,FPSプレイヤーにとってみると勝率に直結する機能と言える。またVR空間でのコミュニケーションにおいても,空間オーディオ技術は体験の質に大きく関わってくる。
とはいえ現状において良好な定位を得るためには,なんらかの音声フォーマットに則ったデータ提供と,それなりに高価なサラウンド対応ヘッドフォンが必要になることがしばしばだ。普通のヘッドフォンで定位を可能とするシステムも存在するが,やはり専用の環境には勝てないと感じることも多い。
そんななか,CRI・ミドルウェアが2022年8月に正式リリースした「コミュニケーションミドルウェア CRI TeleXus」(以下,CRI TeleXus)は,ごくありふれたステレオヘッドフォンで,かなり良好な定位を実現することに成功した。東京ゲームショウ2022のCRI・ミドルウェアブースで実際に体験できたので,その模様を簡単にレポートしたい。
なお誤解なきように強調しておくと「CRI TeleXus」はオンラインコミュニケーションをより快適なものにするために作られた複合的な機能を持つミドルウェアであり,けして空間オーディオだけを実現するものではない。だがゲーマーにとって即座にメリットになる機能として,ここではとくに定位について詳しくお伝えしたい。
聖徳太子とまでは行かないが……
実際に体験できたデモのうち,とくに定位に関わるデモは「空間オーディオボイスチャット」デモだった。これは自分の周囲に7人の話し手がいる状況で1人ずつ話し手が増えていき,最終的には7人全員から話しかけられるようになる,というものだ。
このデモをヘッドフォンで実際に体験してみると,本当にちゃんと自分の周囲を取り囲むように話し手が存在しているように感じられる。右手前方と右手側方,左手前方と左手側方といった(少なからぬ類似システムにおいては)分離が曖昧になりがちな類似方向についても,相当明瞭に位置関係を把握できた。
ただし会場が騒々しかったことも影響してか,「背後から聞こえる音」を,背後から聞こえていると感じとることには,やや難しく感じられた。
なおデモの謳い文句いわく「複数人が同時に発話した場合もそれぞれの声をはっきり聞き分けられる音声分離を実現します」とあるが,正直なところ筆者の耳では6人目くらいで聞き分けは不可能になった。これはどちらかといえば「こんなに話者が増えたら,現実世界だって聞き分けは無理でしょ!」というツッコミ待ちの演出かと思われる(逆に言えば5人目くらいまでは聞き分けられた)。
……といったことを文書で説明しても分かりにくいと思うので,興味のある方はぜひ以下のページで実際に体験してみてほしい。このページの一番下に置かれている4つのデモ動画のうち,「話者分離度の向上」から再生できる動画が,CRI TeleXusが提供する空間オーディオの実例となる。
サラウンド機能を持たないヘッドフォンでも,綺麗に定位できていることを体感できるかと思う。
安価に空間オーディオを楽しめる技術として
さて,本稿では定位について詳しく述べてきたが,CRI TeleXusは基本的にオンラインコミュニケーション空間の快適化・質の向上を意図したものであるため,音声関係の処理はとくに対応が手厚い。通信量の低減や声の明瞭度向上,100名規模の大規模チャットへの対応などは,その典型だ。
また当然ながら同社の統合型サウンドミドルウェアであるCRI ADXとの連携も可能となっており,会場ではリップシンク・ミドルウェアと連携させたデモも動いていた。これらの技術は遠からずVRイベントで採用例を見ることになるかもしれない。
空間オーディオ技術はかなり昔から存在してきたし,ゲームの世界にも少しずつ浸透してきた。
だが近年,「Apex Legends」や「War Thunder」といったタイトルのゲーム実況に注目が集まることにより,より多くのゲームファンが「音が聞こえてくる方向が分かることの良さ」を知るようになっている。推しの実況者が「高価なヘッドフォンを買った」と語る言葉を聞いたことがない人は,もはや少数派ではなかろうか。
かつてない数の人々が空間オーディオの価値を認知するに至ったいま,サラウンド機能を持たないヘッドフォンでも空間オーディオを実現する技術は,非常に大きな価値を持ち得るように思う。CRI TeleXusはゲームファンだけでなく,開発者もまた,大いに注目すべき技術ではなかろうか。
からの記事と詳細 ( [TGS2022]普通のヘッドフォンで空間オーディオを実現する「CRI TeleXus」をTGS会場で体験してきた - 4Gamer.net )
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普通の
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