そもそも「普通の家族」とはなんだろう。
昭和40年代頃から、政府は税金や社会保障費などを計算する上で「標準世帯」という枠組みを用いることがあるという。標準世帯とは「夫が外で働き、妻は専業主婦、2人の子どもを産み育てている」という家族構成をいうそうだ。では、このコラムを読んでいる方々のうち、この「標準」にあてはまる人はどれほどいるだろうか。
大和総研によると、2017年時点で「標準世帯」の割合は、日本の総世帯数の5%にも満たないという。
共働きで子どもはいないカップルもいれば、シングルで子育てをしている人もいる。結婚しない人もいる。これらも「普通」ではないのだろうか。
国が頑なに同性婚などを認めない姿勢は、実は性的マイノリティのみに関わる問題ではなく、「性」や「家族」といった視点で、すべての人に関わる地続きの問題だと言える。
政府が特定の性や家族のあり方を「普通」や「良い」ものと位置付け、それ以外を排除したり生殖をコントロールしたりする姿勢は、過去、そして現在もさまざまな場面で続いている。
例えば、旧優生保護法下では、障害者に対して強制不妊手術が行われていた。刑法「堕胎罪」は現在も残り、望まぬ妊娠をした女性が中絶をした際、女性だけが処罰される場合がある。誰にも妊娠を相談できず孤立し、死産となった女性が逮捕されるケースはたびたびメディアで報道されている。
子ども・子育て支援の政策においても、例えば、コロナ対策として配られた「10万円給付」や「子育て支援給付金」は、市民一人ひとりではなく「世帯主」の口座に振り込まれたため、DV被害を受けて別居していたり、離婚しシングルで子育てをしている人が給付金を受け取れないという問題が指摘されていた。
政府は、子ども政策の中心的役割を担う「こども庁」設置について、「こども家庭庁」という名前に変更する閣議決定を行った。児童虐待を受けた子どもなど、家庭によって苦しめられてきた人もおり、どんな状況であっても「子ども」を真ん中に据えようと名前が提案されていたが、政権の考える家族のあり方や、子育ての責任を家庭に押し付ける考え方から変更されてしまった。
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