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Tuesday, February 25, 2020

【メルセデスベンツ EQC 新型試乗】天下一品な「普通」の味付け…九島辰也 - レスポンス

これまでジャガー『I-PACE』やアウディ『e-tron』といったプレミアムブランドのEVを試乗してきたが、実は今回メルセデスベンツ『EQC』を動かすのは初めて。なので、楽しみにその瞬間を待っていた。

どこか未来的でそれでいてレトロ調


おもしろかったのは、待ち合わせ場所に走ってきたその姿。ボディカラーが白だったこともあるのだろうか、街中ではかなり気配を消している。特にオーラを発することなく、クルマ群の一員として走っていた。

もちろん、クルマに詳しい人は「ん?」と思ったことだろう。キャラクターラインをはじめとしてエッジの効いたラインのないツルンとした面構成のボディは個性的。どこか未来的でそれでいてレトロ調なのが不思議だ。が、そこに興味のない人にはイマドキのSUVの一台という捉え方しかされないだろう。

走らせた印象だが、総体的に言ってこれまでのようなEV感は薄い。アクセルに対するスピードの出方はナチュラルでガソリン車のそれに近い感覚だ。低速から高速域までジェントルにコントロールできる。それでもドライブモードをスポーツにすれば強烈な加速が味わえるのはご想像の通り。ある意味これがなくちゃEVの魅力はない、といった加速を発揮する。

古き良きメルセデスを彷彿させるECOモード


個人的に気に入ったのはECOモードで、これがデフォルトでもいいのではないかと思えた。特に出だしのアクセルの“鈍さ”は独特で、既存のイメージからすると「あれ、反応しない」と思えるほど。が、それが懐かしい。というのも、その感覚は『W123』時代のメルセデス的だからだ。

85年型230Eをかつて所有していたことがあるが、それを動かしている時のことを思い出した。あの鈍いアクセルとトラックのような大きなステアリングホイールが当時のメルセデスの流儀である。その辺の時代のメルセデスを運転したことのある方はぜひこのECOモードを体験して欲しい。

そんな出だしのフィーリングながら、そのままアクセルをグイッと踏み込めばECOモードの領域を超えるような加速を始める。これもまたW123的。思い出して欲しいあの時代のメルセデスの裏技を。アクセルを強く踏むと裏側のスイッチが押され、ギアが一段落ちて加速するのと同じイメージだ。

天下一品のメルセデスの味付け

そんなアクセルワークを楽しみながら高速コーナーへ入っていく。高速道路のジャンクションだ。するとここでもEVらしからぬ動きを見せる。500kg以上のバッテリーを積みながらボテっとしたとこはなく挙動は安定。EVにありがちな、鉄下駄を履いているような足元の重さもなく、想像以上に軽快なフットワークを見せる。というか、言ってしまえば“普通”である。

言いたいのは、この“普通”が大事だということ。これまでのEVはある意味EV然としていて、ガソリンエンジン車の加速や挙動とはかけ離れていた。冒頭で記した2台は別として、それ以外はそうしたモデルが多い。そのため、クルマを操るといった面でネガティブな印象を得ずにはいられなかったのが正直なところ。

が、EQCは違う。ガソリン車から乗り換えてもまったく違和感なくドライブできる。そう、この“普通”の感覚が素晴らしい。これなら長年オイルの匂いを嗅いできた世界中のカーガイの多くは納得だろう。さすが、メルセデス。その辺の味付けは天下一品と言いたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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